開業医実態調査、介護改定でマスコミ懇談会開催/保団連
5月28日、保団連会議室において、「開業医の経営・労働実態調査」と介護報酬改定を中心としたマスコミ懇談会を開催した。マスコミからは読売新聞、株式会社じほうをはじめ8社・13人が参加し、保団連からは宇佐美宏歯科代表、竹崎三立副会長、杉山正隆理事、大阪府保険医協会・小薮幹夫事務局次長、保団連事務局が出席した。
「開業医の経営・労働実態調査」については、大阪協会・小薮事務局次長より調査の概要が報告され、その後、質疑応答を行った。報告では、開業医の労働は、時間外労働時間だけみても過労死の認定基準である月80時間を超えていること。医師であると同時に経営者、雇用主であり、診療以外にも患者とのトラブル対応や雇用管理などに時間が取られ、勤務医の労働とは質的に大きな違いがあることを強調した。こうした実態から、開業医へのさらなる労働強化は医療安全の面からも問題があると指摘した。
また、補足として、財政審の医師の偏在是正をめぐる診療報酬の配分見直し、自由開業医制への「公的関与」の議論で、前提とされている「医師の給与の比較」等の財務省資料は、中医協の「医療経済実態調査」からみても医療現場の実態と大きく異なることを指摘した。
さらに、岡山県保険医協会が医療施設動態調査より作成した医科・歯科診療所数の増減傾向の資料をもとに、地方を中心に診療所数が急激に減少している実態を示し、2010年診療報酬改定で再び診療報酬の配分見直しに終始するならば、経営の悪化で診療所はますます減少し、地域医療を支える基盤が破壊され、医療崩壊が加速するだろうと指摘した。
参加した記者からは「直近1年の診療所激減の要因は何か」、「今後協会・保団連で患者とのトラブルなどの相談窓口を設けないのか」といった質問が出された。
質問に対し、竹崎副会長は、詳しい分析はこれからと断った上で、「小泉構造改革の医療費抑制で、診療報酬引き下げが行われて以降、特に地方で診療所が減少し、地域格差が生まれている。医師の高齢化による閉院も背景にはあるが、都市部に新規開業が集中し、地方では開業したくてもできない状況になっている。さらに、東京でも最近は新規開業が減っている。今後分析していく必要がある」と答えた。
介護報酬改定では、3%の引き上げでは介護崩壊は食い止められず、10%以上の引き上げが必要なこと、保険医療機関は通所リハビリの指定があったものと見なすこととされたが、これは将来、維持期リハビリを医療保険の給付対象から除外するための布石であり到底認められないこと、介護給付費削減を目的とした新介護認定制度の問題点を指摘した。竹崎副会長、杉山理事からは新認定基準で認定審査会では混乱が起きていることなどを紹介し、国は3%などと数値だけを公表するが、現場での影響を検証した上での報道を要望した。
最後に、宇佐美歯科代表は、「医療現場の実態をつかむには、まず保険医協会に連絡を。保団連・保険医協会としても、今後も独自の調査などを行い、実態に基づく情報を発信していきたい」と締めくくった。懇談会終了後も多くの記者が残り、個別に質疑応答を行うなど関心の高さが伺えた。