転ばぬ先の杖 休補加入のススメ  PDF

転ばぬ先の杖 休補加入のススメ

大澤正巳(西陣)

 1979年に医師になってから大きな病気もなく、自分の体力には自信を持っていました。麻酔科医院開業を機に周囲の勧めもあり、保険医協会の休業補償制度に加入しました。開業後もインフルエンザの高熱で診察日を1日休んだ程度でしたが、不幸は突然襲ってきました。

 2010年11月に左耳介の湿疹が治りにくく、バイオプシーをしたところ、当初は膨隆性皮膚線維肉腫との結果でした。手術目的で受診した府立医大病院で再検査の結果、血管肉腫と診断され、耳介切除、放射線治療、化学療法を受けました。一般的には発見時には転移していることが多く、余命半年の疾患で治療法も確立していません。幸いなことに転移はなく、3週毎の化学療法と週3日のインターフェロンおよびインターロイキンでの治療を可能な限り続けるとのことでした。これらの治療のため医院は休院せざるを得なくなりました。診療報酬は入ってきません。医療機器や車のローン、入院費用など悩みましたが、休業補償制度のおかげで安心して治療に専念することができました。その間に孫の誕生、娘の卒業、医師国家試験の合格もともに喜ぶことができました。

 治療が一段落つけば医院再開をと考えていたのですが、中途半端に開院すれば患者さんにも迷惑がかかるので躊躇している間に4年間の補填期間を終了してしまいました。

 残念なことに15年7月のPET検査で肺に転移が疑われて、治療間隔が空いていた化学療法が初期のペースに戻ってしまい、その効果をCTで判定しながら次の治療法を考えている状況です。しかし、半年の余命と覚悟していたのですから、5年間も全身状態の悪化もなく過ごしてこられ、これからもおまけの人生と考えて、楽しく過ごそうと思います。

 保険医協会の休業補償に入っていなかったら、自分にかかってくるストレスもずっと大きなものとなっていたと思います。息子にも加入を勧めました。

 休業補償制度は転ばぬ先の杖です。この制度を聞かれれば加入を勧めていきたいと思います。

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