財源確保し積極的に医療費増を/中医協会長の遠藤氏
中医協会長を務める学習院大経済学部の遠藤久夫教授は10月9日、厚生統計協会が都内で開いた社会保障・人口問題基礎講座で講演し、「日本は先進諸国の中で最も高齢化率が高いにもかかわらず、国民医療費の対GDP比が低い水準にある現状は不自然だ」とした上で、「財源を確保して医療費を積極的に上げることを考えなければいけない」と強調した。
遠藤教授は日本の医療の特徴として、(1)フリーアクセス、(2)出来高払い、(3)人口当たりの病床数の多さ─の3点を挙げ、「日本のシステムでは医療費が高くなるような条件が多い」と指摘。このため国は、(1)薬価の引き下げ、(2)平均在院日数の短縮、(3)介護施設への転換推進による病床削減─などに着目して医療費の伸びを抑えてきたと説明した。
介護施設への転換推進による病床削減に関しては「社会的入院を介護施設や在宅に移すという国の方向は間違ってはいないが、介護給付費が低く抑えられヘルパーなどのなり手がおらず、受け皿不足が否めない以上、介護給付費を増やしていくことは絶対に必要だと思っている」と主張した。
経済界などが主張する民間保険による「医療の市場化」についても言及し、「公的保険であれば若い人にも強制的に保険料を払ってもらうことはできるが、民間保険ではリスクと保険料が対応しないと保険として成り立たず、高齢者は相当に高い保険料を払わざるを得ない」と指摘。「日本の医療費の大半は高齢者であり、民間保険によって高齢者医療のファイナンスを代替させるのは難しい」と述べ、公的保険を民間保険で代替する考え方に否定的な見方を示した。
さらに「社会保障分野の経済波及効果が高いことや雇用誘発効果が高いことは、2008年度の厚生労働白書が指摘している通り」とした上で、「社会保障費の削減は限界だという厚生労働省からのメッセージではないか」と説明した。(10/10MEDIFAXより)