財政審建議、自由開業制を否定/病院への手厚い診療報酬を主張
6月3日にまとまった財政審の建議で、病院勤務医の負担解消に向けては、病院に対する診療報酬の手厚い配分を求めたほか、医師の偏在解消策として現在の自由開業制を否定し、一定程度の規制を設けるべきと提案した。中医協の在り方の見直しも要求した。
社会保障については「将来世代へ負担を先送りしないことが必要」
との原則論を展開。給付と負担の対応関係を明確化するため「中期プログラムの考え方に沿って、社会保障費用の区分経理の在り方について議論を深める必要がある」とした。社会保障費2200億円削減問題については具体的な言及を避けたが、「社会保障分野においても、骨太06などの歳出改革の基本的方向性は維持する」とだけ記した。
医療については、医師不足や勤務医の過重労働といった課題を列挙し、背景には、地域間、診療科間、病院・診療所間の医師偏在問題が横たわっていると指摘した。解消に向けては「病院に対する診療報酬を手厚くする」「医師の能力などに応じた配分が可能になるような見直しを行う」など、診療報酬の配分を大幅に変えるべきと提言した。
さらに、診療報酬改定の在り方についても見直しを要求。ヒアリングで「中医協で病院経営の在り方を含めた議論を行うことは難しい」との指摘があったことを重要視し、「中医協以外の場においても、医療費の配分について幅広く議論された上で、それが中医協での議論・決定にも適切に反映される必要がある」とした。さらに、委員構成を含めた中医協の在り方の見直しも求めた。
医師の適正配置に向けては「医師の養成には多額の税金が投入されていることなどにかんがみれば、医師が地域や診療科を選ぶことなどについて完全に自由であることは必然ではない」と指摘。ドイツで地域や診療科ごとに定員枠を設けていることを例に挙げ、自由開業制などを一部規制する考えも盛り込んだ。病院勤務医の負担軽減を進めるため、高い技能を持つ看護師やコ・メディカルの養成・活用が必要との見方も示した。
医療分野の効率化・合理化関係では、後発医薬品の使用促進や医療給付の効率化、レセプトオンライン化などによるIT化の推進が必要との見方を示した。
また、医療費総額の増加を許容すると同時に、保険料と税負担の増加を抑制する方策についても言及。具体策として「諸外国を大きく下回っている私的医療支出(自己負担や民間保険など)を増やすという選択肢を視野に入れることが必要」とした。財政審が以前から主張している「保険免責制度の導入」についても検討課題に挙げた。
10年度にひかえる診療報酬・薬価改定については「民間賃金や物価の動向などを踏まえて総額を検討する必要がある。特に病院・診療所間の配分の抜本的見直しが必要」と重ねて強調した。(6/4MEDIFAXより)