護憲のための経済政策を 松尾氏が九条医療人の会で講演  PDF

護憲のための経済政策を 松尾氏が九条医療人の会で講演

 九条の会アピールを支持する京都医療人の会が第8回定期総会を5月7日に開いた。『この経済政策が民主主義を救う』の著者、松尾匡氏(立命館大学経済学部教授)を講師に公開講演会「護憲のための経済政策」を行った。

 講演で松尾氏は、安倍首相の目標は改憲を実現して戦後民主主義体制に替わる新体制を創った者として歴史に名を残すことであり、選挙のときに好景気を実現して圧勝するための手段として経済政策を進めていると分析。一連の国政選挙までは、それが財界の利に反することであっても、なりふり構わず進めてくるであろうとした。

 それは世論の関心が改憲・安保よりも圧倒的に福祉・景気にあるためで、不況で苦しめられている人が多い中、野党が景気拡大に反対のイメージを持たれていては見放されるとした。戦後民主主義を守るには、安倍政権よりも景気拡大を訴えること。その手段は「2%インフレに達するまで、日銀の緩和マネーを福祉、医療、教育、子育て支援へ大規模に政府支出し雇用拡大すること」だと提言した。こうしたインフレ目標政策は、新自由主義に反対する新しいケインズ派の経済政策として考え出されたもの。クルーグマンやスティグリッツといったアメリカのリベラル派経済学者が主張しており、これを日本で採用したのが皮肉にも安倍内閣であった。

 松尾氏によると、「失われた20年」とは、需要と供給が相乗的に伸びていた「成長時代」と、人手不足で供給が需要を賄えない、慢性的インフレ傾向の「少子高齢時代」の間の時代。需要が停滞しているのに、成長期に築いた供給能力が過剰な移行期で、無から作ったおカネで財政支出してもインフレがひどくならない「夢の時代」のこと。しかし、放っておけばデフレ不況となる。この「神がくれたチャンス」の時代を、失業、倒産、生活破壊、貧困、自殺の山を築いて無駄に過ごしたあげく、終盤になって安倍首相に旧来型公共事業のために使わせている。もし、民主党政権が子ども手当、高校無償化、震災復興などを本格的に展開していたら公約実現でき、しかも好景気になって政権は続いていただろうとした。

 心しておくべきことは、戦前のドイツが均衡財政にこだわって30年代大不況を悪化させ、その後のヒトラー政権が大規模な公共事業で完全雇用を実現し、支持を磐石にしたうえで戦争に乗り出した。このような歴史だけは繰り返してはならないと強調した。

 講演後、「『違憲』の『戦争法』廃止を求め、憲法の平和主義を守り続ける宣言」参加者アピールを読み上げ、採択した。

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