談話 参院選結果を受けて
参院選は自民、公明の与党が改選過半数を確保し、これにおおさか維新の会などを加えた「改憲勢力」が憲法改正を発議できる3分の2を超えた。すでに衆院も自公でこの議席を占めており、戦後政治の重大な転換点となる可能性がある。今選挙は国民にも医療者にもきわめて重い意味を持つものとなった。
この結果を各紙は揃って「改憲勢力3分の2超」との大見出しで報じた。しかし、安倍首相が争点に掲げていたのは消費税率引き上げ先送りとアベノミクスの是非であり、野党の訴えた改憲阻止には選挙期間中、沈黙を続けた。論戦はかみ合わず、アベノミクスの限界を指摘したものの対案を提示できなかった民進党への支持は広がらなかった。
選挙期間中はあえて語らず、数を振りかざして押し切る。安倍首相の手法は、特定秘密保護法や安全保障関連法の例をひくまでもなく、明らかであろう。選挙直後には、改憲案を最終的に承認するのは国民投票であって、「選挙で争点とすることは必ずしも必要ない」とまで語り、秋の臨時国会から憲法審査会で改憲論議を始める意向を示した。
いうまでもなく、改憲は選挙で争点として選ばれた国会議員によって熟議されたうえで、最後の確認として国民投票にはかられるものである。なぜ変えねばならないのか、どの部分を変えるのかを国民に問わずに、「信を得た」とは決して言えないのである。
自民党は政権復帰した2012年の衆院選以来、国政選挙で勝ち続けてはいるが、棄権者も含めた全有権者に占める割合「絶対得票率」でみると、12年衆院選16%、13年参院選18%、14年衆院選17%、そして今回は19%と有権者の2割に届いていない。
朝日新聞が直後に行った世論調査では、今選挙結果について「首相の政策が評価されたから」は15%で、「野党に魅力がなかったから」が71%に及んだ。安倍首相の下での改憲に「反対」は43%で、「賛成」の35%を上回っている。
衆参で圧倒的多数を得たからといって、国民が安倍首相に白紙委任したわけではない。数の力で押し切る暴挙をこれ以上繰り返させないために、監視を強めねばならないであろう。
今選挙では、立憲主義や民主主義が壊されることへの危機感から民進、共産、社会、生活の4野党が32ある1人区すべてで候補者を一本化する「共闘」が行われた。11勝21敗で負け越したとはいえ、一定の力を示し、東北6県中5県においてTPPで、沖縄県において基地問題で与党に厳しい審判を下した。
今回は全体として与党を脅かすまでは届かなかったが、野党には国民が望む社会保障充実と経済好転に向けての対抗策を示す力をつけて、批判の受け皿となる存在感をしっかりと示してほしい。
消費増税の2年半先送りで、社会保障・税一体改革そのものに立ち返って考えなおす必要に迫られている。協会は、今選挙にあたり社会保障費の抑制策および患者負担増計画の中止、所得税と法人税見直しによる財源確保、TPPからの撤退などを重点要求項目として京都の候補者に送付した。引き続き政府に要求していく所存である。
京都府保険医協会
副理事長 渡邉賢治
2016年7月20日