談話 医療保険制度改革関連法案を可決させてはならない  PDF

談話 医療保険制度改革関連法案を可決させてはならない

 参議院で審議中の「医療保険制度改革関連法案(持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案)」を、最早採決する動きとなっている。
 私たちは、地域住民の生命と健康を守る医療者として、この重要法案がまともな審議もなく、軽々に成立させようとする国会の現実を非常に残念に思う。決して今のような審議状況で医療保険制度改革関連法案を成立させてはならない。
 これまでの国会審議は決して十分ではない。
 これは言うまでもなく、改革法案に盛り込まれた内容が非常に多岐に亘ることが原因の一つである。中心テーマである市町村国保都道府県化のみならず、患者申出療養、入院時食事療養費の自己負担拡大、紹介状なしの大病院受診に窓口定額負担と、あらゆるメニューが一括して提案されている。そのいずれもが高い問題性を有し、一つのテーマに絞って質問しても、結局消化不良で審議が終わる。全ての内容を真に理解して国会審議しているのか、はなはだ疑問である。このままでは国民にこの法案が一体何なのかまったくわからず、数の力のみで成立される可能性が高い。実はそのこと自体を狙っているようにも思える。
 私たちは、今法案が目指す国保都道府県化が、昨年成立した医療介護総合確保推進法と組み合わさることで、政権の目指す「医療・介護」の姿を実現させようとするものと考えている。
 それは次のようなものだ。
 (1)国家が、医療費適正化(=抑制)目標を都道府県ごとに設定させる
 (2)都道府県が、その医療費抑制目標達成に向け、医療にかかる費用と提供体制を管理し、それに基づく政策を展開する
 (3)市町村は、引き続き国保の保険者かつ介護保険の保険者として、医療と介護給付の抑制を追求する
 (4)医療機関・介護事業所・地域住民は、医療・介護給付費抑制策が推進される下、「自助」「互助」機能を発揮し公的責任が縮小された中、自らの手で地域包括ケアシステムを構築する
 (5)保険給付範囲の限定化や「自助」が強要され、本来、社会保障として公的責任で提供されなければならない医療・介護サービスに営利企業の参入が促される
 このように、今回の法案がもたらすものは、これまで医療者・国民が営々と培い、守ってきた国民皆保険体制の解体的大転換である。
 こうした法案の本質が、国会審議に於いて明らかにされること、審議を通じ、皆保険体制の堅持・拡充・発展こそが、国民の医療保障を前進させる道であることをあらためて確認していただきたい。

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