誰もが受けられるよう定期接種化を 子宮頸がん・子どもを病気から守るワクチンで講演会  PDF

誰もが受けられるよう定期接種化を
子宮頸がん・子どもを病気から守るワクチンで講演会

 協会は府民に対して、京都小児科医会とともに開発途上国の子どもたちにワクチンを届けること、そして、日本の子どもたちにもワクチンの大切さを知ってもらうことを目的にエコキャップ運動に取り組んできた。このたび、目標である両会の会員数のポリオワクチンを寄付できる見通しとなったことを受けて、府民向けに9月4日、ウィングス京都において、ワクチンをテーマに講演会を開催した。共催は、京都産婦人科医会、京都小児科医会。冒頭、関理事長とともに両会を代表して大島正義会長、吉岡博会長が挨拶した。講演会には若い母親や自治体担当者など府民160人が参加した。

挨拶する大島会長(左)と吉岡会長
挨拶する大島会長(左)と吉岡会長

子宮頸がんの撲滅願う

 第1部・子宮頸がんワクチンでは、38歳で子宮頸がんを患った女優の仁科亜季子さんが、自身の体験をもとに、「元気な明日のために 〜がんに負けない〜」と題して講演。公費助成を求める活動の紹介や、つらいがん治療の経験から、第1次予防としてワクチンを、第2次予防として20歳を過ぎたら検診をと訴え、世界から子宮頸がんが撲滅できるよう願っていると締めくくった。

 京都府立医科大学大学院女性生涯医科学助教の澤田守男氏は、「子宮頸がんは予防できる!―子宮頸がん診療のパラダイムシフト」と題して、子宮頸がんが起こるしくみ、HPVワクチンの有効性などを詳しく説明した。

子宮頸がん撲滅を訴えた仁科さん(上)。講演する澤田氏(下右)と武内氏(同左)
子宮頸がん撲滅を訴えた仁科さん(上)。講演する澤田氏(下右)と武内氏(同左)

髄膜炎関連ワクチンの早期定期接種化を

 第2部・子どもを病気から守るワクチンでは、耳原総合病院小児科・佛教大学社会福祉学部の武内一氏が、「髄膜炎関連ワクチンを定期接種へ―ワクチンの大切さをお伝えしたい」と題して、ワクチンのしくみや役割について説明したうえで、世界から遅れている日本のワクチン行政の問題点を指摘。すべての子どもたちがワクチンを受けられるために、髄膜炎関連ワクチンを定期接種化する重要性について訴えた。

 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会代表の田中美紀氏は、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンが発売された後も、任意接種であるが故に、保護者のもとにワクチンの情報が届いていないことで起こった悲しい事例を報告。また、高額な費用負担にも触れ、子どもたちのいのちに格差を生むことがあってはならないと訴え、今、私たちは何をすべきなのかと問いかけた。

ポリオ不活化へ切替を

 ポリオの会からは生ワクチンの被害者である青木秀哲氏、ポリオ患者である時光昌代氏が講演。世界のほとんどの先進国で不活化ワクチンが使われている中、日本で使われているポリオ生ワクチンによる被害を報告。不活化ワクチンへ切り替えた場合の費用などの資料も示し、早急な切り替えを訴えた。

講演会のもよう(上)と2部の演者(左から田中氏、青木氏、時光氏)
講演会のもよう(上)と2部の演者(左から田中氏、青木氏、時光氏)

向日市等の助成を紹介

 京都府内でいち早くヒブワクチンに対する助成を始めた向日市・長岡京市・大山崎町の2市1町を代表して、向日市健康福祉部健康推進課の宮田経子課長から、その取り組みの内容を紹介。健康被害が発生したときの対応の面などでも、必要なワクチンは定期接種として位置づけしてほしいと、さまざまな方面に要望していると報告した。

国による実施望む声

 参加者アンケートからは、「予防接種には、さまざまな不安や疑問を持っていた。子育て中の保護者の1人として、とてもよい会でした」「予防接種のことに関してあまりにも無知だったので勉強になりました。早くワクチンの重要性が広まり、ヒブ等の任意のものも定期接種となることを切に願います」などの感想があった。

 国や自治体に対しては、「ポリオワクチンの不活化ワクチンを早く導入してください」「何とか1日も早く必要なワクチンがすべての子どもたちに、国の当たり前の事業として実施されることを望むし、その声を届けたい」との意見もあった。

自治体アンケート実施

 また、この講演会を開催するにあたり、京都府と京都府内の26市町村に、任意接種のワクチンの助成制度についてのアンケートを依頼した。調査期間は、7月23日〜9月3日。ヒブワクチンに対する助成を始めた向日市・長岡京市・大山崎町以外に、助成を実施している自治体はないが、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンの助成について、6自治体が検討したことがある(している)と回答した。

 子宮頸がんのワクチンについては、京都府の山田知事が8月13日の会見で、助成費を早ければ9月補正予算案に盛り込む方針を明らかにしたことで、9自治体が助成制度の実施を予定していると回答している。

 京都府が助成の意向を示したことで、市町村の間で急速に助成が広がっていることは、予防接種行政の実施主体である市町村は、必要なワクチンを打つことができる体制の構築を強く望んでいることの表れだと思われる。

財源や補償で国に要望

 また、助成制度を実施しない理由として、財源の問題や健康被害が起こった時の補償の面を心配している自治体が多くみられる。このことからも、そういった財源や健康被害の補償の問題を解決し、ワクチンの安定供給のためにも、国が責任を持って、必要なワクチンを定期接種化すべきである。(詳細は、メディペーパー9月号に掲載)

さらなる取組進める

 協会は今後も、講演会でも示された任意接種の問題やポリオ生ワクチンの問題など、ワクチン行政の改善を求め、幅広く府市民と結びつき、取り組みを進めていく。

 なお、当日の模様は、毎日放送とKBS京都で放送された。協会のメディカルページでも後日、映像を配信する。

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