読者のひっち俳句/隆英 選  PDF

読者のひっち俳句/隆英 選

入選

白山の麓へ続く稲の花

珠子

佳作

かなかなや後姿に覚えあり

珠子

飛び込むや涼しき飛沫上げにけり

絢子

通り雨しずく残して紫蘇畑

絢子

赤松の護摩木ぱちぱち大文字

絢子

大戦にあの人逝きし夏手前

善郎

山寺に住職ひとり法師蝉

善郎

夏草に耳かたむけて水琴窟

善郎

道あつしされど川面はあきつかな

禎子

灯ともせば窓に影絵の守宮(やもり)ゐて

禎子

秋の日や二人は誓ふ永久の愛

青磁

(順不同、仮名づかい新旧自由)

短 評

 珠子さん、加賀の白山という名山に向かって麓の稲田がひろびろと延びています。稲の花は朝日が照ると白い小さい花をのぞかせますが、日が翳るとかくれます。ただ稲の花が咲いているというだけでなく、私には稲の花が白山を讃えて、みな白山の方へ向かって咲いているように思われるのです。次の句は余情たっぷりです。

 絢子さん、これは料理屋の青紫蘇ではいけません。もちろん「しばづけ」用の紫蘇です。そして一面の紫蘇畑の向こうには寂光院へ行く径も見えていることでしょう。

 今年の残暑はことにはげしく道はかんかん照りです。しかし、川の上は涼しく、あきつ(とんぼ)が群れをなして飛んでいて、禎子さんもそれに気づかれました。やがて野も山も飛びまわり赤蜻蛉になってゆきます。

選者吟

  夭逝の従妹ありけり合歓の花 隆英

<お知らせ> 永らくご愛顧いただきました「文芸欄」を、年内で終了させていただくことになりました。今後は多彩な企画を掲載していきたいと存じますが、会員各位からの今後の企画等に関する御意見をお寄せ下さい。

 なお、本欄の応募については、それぞれ以下の締切となります。11月俳句(締切10月15日)・11月自由詩(締切10月25日)・12月俳句(締切11月15日)・12月自由詩(締切11月25日)。

ページの先頭へ