読者のひっち俳句/隆英 選
入選
花一輪湯呑みに開き香りけり
絢子
佳作
夜廻りの拍子木濡らす春しぐれ
絢子
葉桜やあぶり餅屋の大薬缶
絢子
公園に尺八奏者時は春
青磁
春眠をむさぼりし後投票に
青磁
菜の花の海へつづきて雲の影
善郎
梅かおり風のまにまにいざなえる
善郎
黄昏るる山路に彼岸桜かな
珠子
花のかげゆらぎ水輪の広がりぬ
珠子
夜桜や語らひつきぬ同窓会
素
春うらら人影見えぬ投票所
素
(順不同、仮名づかい新旧自由)
短 評
絢子さん、「花」といえば、草木の花、園芸種の花などいろいろありますが、俳句の方では約束として「桜の花」をさすことになっています。これは八重桜の塩漬けの花でしょう。私はこの冬、平野神社の塩漬けの「開運桜」というのを北野天満宮の元宮司様から頂きました。北野さんには梅の花の「紅梅煎」というのがあり、これも頂いて、いずれも熱湯を注ぐと香たかい塩味のおいしい飲物になります。白磁の湯呑ですと桜のうすい花びらがほどけてひるがえり、あたかも天女の衣のように美しいです。あぶり餅は今宮神社でしょうか、鎮花祭ですね。
珠子さん、奥行のある複雑な景です。池に花の影がゆれ、虫でもいるのか水輪がほつほつひろがるのでしょう。
素さん、夜桜の下での同窓会とは最高に楽しいひととき。次は天気が良いので、花より団子ならぬ、投票所より桜の情景のようです。
選者吟
奥嵯峨は池に靄湧き朝ざくら 隆英