読者のひっち俳句 隆英 選
入選 紅色の花茎揺るる京鹿子 絢子
佳作 風そよぐ早苗の向きのまちまちに 絢子
烏賊めしを作りて孫に喜ばる 珠子
葭切の姿はみせで夕茜 珠子
若かえで歩行距離つぐ掲示板 素
くちなしのあまきかおりや窓の風 素
花筏瀬田の曲りで千切れゆき 善郎
春愁に浸りし日々ぞ湖の家 善郎
看護師の笑顔ずぶぬれ梅雨嵐 青磁
五月晴月追ひかけて日が昇る 青磁
(順不同、仮名づかい新旧自由)
短 評
絢子さん、京鹿子は6月頃分枝した枝先にいっぱい赤い花をつけますが、バラ科とはおどろきです。茎は緑色ですが紅紫に変るのでそれが作者には印象に残ったのでしょう。
珠子さん、葭切は行々子とも葭雀ともいいます。葭原の穂先でにぎやかに飛びながら騒ぎ立てますが、日暮れ時なので、姿は見せず葭の中で鳴きあっているのです。郭公がこの巣に托卵するという。そういえば、私はずいぶん前に、深泥池で郭公の声を聞いたことがあります。
葭雀では石田波郷の「葭雀二人にされてゐたりけり」が有名です。見合の時の作で、離れたところで世話した人たちがにぎやかにしゃべっているのです。
選者吟 新聞を見て黙すのみ沖縄忌 隆英