読者のひっち俳句 隆英 選

読者のひっち俳句 隆英 選

入選 紅白の花水木咲く資料館 珠子

佳作 思ひ出も共に炊きこみ浅蜊めし 珠子

   花水木咲きてなつかしニューヨーク 珠子

   小賀玉やうつむきかげん葉にかくれ 素

   胸いっぱい若葉の匂ひ散歩道 素

   風の来て満天星の花ころころと 素

   次々と逝き給ふ勿れ花の裡 善郎

   篝火に映えゆらめきて花万朶 善郎

   落花しきり春愁のみぞ徒に 善郎

   公家屋敷の池に片寄る花筏 絢子

   桐の花空の青さに応えけり 絢子

   流行に遅れず夏の風邪を引く 青磁

 (順不同、仮名づかい新旧自由)

短 評

 珠子さん、植物園の北にある京都府資料館に私はよく調べもので通いました。近くて駐車できるのが有り難かったけれど、昨今は新聞をはじめ主なものが岡崎へ移ったので全く行きません。ところで、その資料館の東には水木の木立があって紅白の花がとても美しく、作者の水木もそれでしょう。この花はアメリカ原産で「アメリカヤマボウシ」ともいい、東京市長・尾崎行雄が桜を寄贈した返戻として水木が送られたという話は有名です。

 素さん、小賀玉は黄心樹とも書き、招霊の転の由、神木として神社に多く京都では白峰神宮が有名です。先年、九州霧島神宮で苔むした大木を見ました。花はバナナのような強い芳香がありますが、葉陰のため俯きかげんに見えたのでしょうか、上へ向いて咲くと本によっては書いてあります。わが家の花もそろそろ終わりです。

選者吟 木堂の扁額あふぐ賀茂祭 隆英

注 木堂:犬養毅(五・一五事件)

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