診療手控えの実態と負担のあり方をアンケート  PDF

診療手控えの実態と負担のあり方をアンケート

政府の改革で社会保障は「立ちいかなくなる」

 協会は2013年10月から14年4月にかけて、会員対象に「医療費負担問題」でアンケートを実施した。この中で窓口負担による診療手控えの実態や負担のあり方についての考えが明らかになった。対象は2374人(地区懇談会を開催した23地区の会員)、回収数は387(回収率16%)。

 最近の患者動向で気になること(複数回答)では、「診療内容の手控えをたのまれることが増えた」47%、「受診の手控え」が35%、「不安を漏らす患者が増えた」15%と経済力により医療から遠ざけられている実態が報告される一方で、「特に変わりなし」も36%あった。

70〜74歳の2割化で受診抑制を心配

 70〜74歳の2割負担化がこの4月より実施されたが、その予測される影響(複数回答)について、「受診抑制を心配」が82%、「健康悪化の助長を懸念」が53%となり、「影響は気にするほどでない」は9%に止まった。

「応能負担」と「年齢に即した負担」拮抗

 ただ、年齢に関係なく能力に応じて負担するのが当たり前との考えでの70〜74歳窓口負担引き上げをどう考えるかについては、「負担能力があるのなら高齢者も負担すべき」が44%と「高齢者に配慮した負担とすべき」37%を上回った。「全体の財政を考えると致し方ない」も16%だった。

「必要な医療保障は国の責任」は6割

 社会保障への公費投入を絞り込んで、公的な役割が縮小されていることに対し、「必要な医療保障は国が責任を負うべき」と批判的見解が61%、「全体の財政を考えると致し方ない」との追認意見は22%。「たとえ社会保険であろうと負担の範囲内に給付を抑えるべき」との意見は8%。

制度改革による持続可能性を6割が否定

 社会保障の公費負担の主たる財源とされる消費税は10%に引き上げてもなお不足し、「更なる引き上げは不可避」(財政審)と指摘されている。「消費税増税」か「給付抑制」か、という組み合わせで本当に日本の社会保障が「持続可能」になると考えるか(複数回答)について、「立ちいかなくなる」59%、「健康悪化を懸念」58%、「企業責任追及すべき」32%の順で、「消費税で対応するしかない」は13%のみであった。

国の理念書き換えで現場に困惑と諦観?

 アンケートの実施は、昨年8月に政府の社会保障制度改革国民会議が報告書をまとめ、その具体化が図られている時期から消費税率8%への引き上げが実施されるまでの時期にあたる。

 報告書は社会保障における「自助」を過度に強調し、「共助」は「自助の共同化」であると歪め、「公助」を限定矮小化することで、これまでのように必要な医療をすべて保障するのではなく、国民の負担できる範囲でのみの医療給付に根幹からつくりかえることを打ち出した。また、アベノミクスにより物価は上昇してきているにもかかわらず、一般市民はその恩恵を感じられず、生活保護世帯の増加にも歯止めがかからないまま、消費税増税が追い討ちをかけようとしている。

 医療現場においては、更に困難な状況が到来することが予想されるが、こうした国による理念の書き換えや財政危機論の喧伝により、「致し方ない」などの諦観がある程度浸透していることを伺わせる結果ではないだろうか。

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