診療報酬改定率に対する談話  PDF

診療報酬改定率に対する談話

京都府保険医協会理事長 関 浩

本体引き上げを評価するも、「一体改革の第一歩」との位置付けに懸念

 2011年12月21日夜、診療報酬の12年度改定率について小宮山厚生労働大臣と安住財務大臣が合意した。全体でプラス0・004%、本体でプラス1・379%の改定となり、薬価・材料価格の1・375%引下げにより捻出される約5500億円が財源となる。また、介護報酬改定もプラス1・2%で合意された。

 我々保険医は「民主党政策集INDEX2009」に掲げられた「総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げる」との公約実現を今後も求めていく。しかし、東日本大震災という未曽有の大災害後の初めての改定であることを鑑みれば、11月22日の「提言型政策仕分け」の結果を盾に、本体のマイナス改定という乱暴な要求を突き付けた財務省に対して、全体でマイナス改定を回避し、本体プラス改定とした小宮山厚労大臣の努力を評価し、深く感謝を申し上げたい。

 一方、診療報酬の改定に関する合意文書では「別途、後発品の置き換え効果の精算を行う」とされ、全ての長期収載品が0・9%追加引き下げられる。医療費ベースで0・06%、約250億円のマイナスとなり、これによって実質的に全体でマイナス改定となる。この金額は、再診料2点(診療所1点分で100億円、病院1点分で20億円)に相当する金額である。本来であれば、12年診療報酬改定の財源に繰り入れて、不合理是正につなげるべきだ。

 今回の合意文書は、12年改定に向けた中医協の議論に踏み込むような、財務省主導の入院・入院外の配分比率に関する縛りや、診療所から病院へ財源移転を求めるような内容が合意されていない点は評価できるが、「『社会保障・税一体改革成案』の確実な実現に向けた最初の第一歩であり、『2025年のあるべき医療・介護の姿』を念頭に置いて」取り組む、としている点は注意が必要だ。12年1月6日に閣議報告された「社会保障・税一体改革素案」で示された急性期医療の充実、在宅医療の推進、地域包括ケアの構築は重要な課題だ。しかし一体改革は、急性期病床、一般病床の平均在院日数短縮をより進め、より早期に在宅医療に移行して、介護を中心に医療・介護の連携で支えさせようと企図しているが、介護保険制度は持続可能性の名目の下に給付が抑制されている。診療報酬・介護報酬上の給付抑制が具体化されるような、同時改定にさせてはならない。

 また、同日昼間に開催された中医協で、診療側(二号側)委員はA4版12ページ(医科は7ページ)に及ぶ意見書を提出し、多数の項目について具体的検討を要求している。その中には、保団連・保険医協会が要求してきた内容も多数含まれているが、1月から2月の中医協での検討の最終盤において、我々保険医の要求を反映した改定内容となるか注視し、必要に応じて最後まで粘り強く要求していきたい。

 特に、1.「診察にあたって、基本的な医療の提供に必要な人的、物的コスト」さえ保障していない低い再診料の改善、2.入院中の他医療機関受診の制限の改善、3.異なる技術の在宅療養指導管理の算定制限の廃止、4.京都府保険医協会と京都府のリハ三団体でまとめた提言に沿ったリハビリテーション制度の改善、5.地方自治体立病院で届出が多い13:1、15:1看護の入院基本料の引き上げ―などを是正、改善することを求めていきたい。

2012年1月10日

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