診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画 第四弾  PDF

診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画 第四弾

京都府理学療法士会、京都府作業療法士会、京都府言語聴覚士会、京都府保険医協会 実施

維持期リハビリの算定継続と廃用症候群のリハビリの正当な評価を

 2012年診療報酬改定でのリハビリテーションでは、医療から介護への流れの一環で、介護保険のリハビリテーションへの移行を促すことを目的に、要介護者被保険者に対する維持期リハビリの点数が引き下げられた。さらに、改定の附帯意見で介護保険サービスの充実状況を確認するとはされているものの、次回改定以後は点数そのものが算定できなくなるとされている。また、廃用症候群に対するリハビリについては、同様に附帯意見で実態を調査した上で改定に反映するとされ、2008年、10年改定に続いて更なる制限や不利益変更が予想される。
これらをはじめとして、リハビリを取り巻く課題は多く、これまでも協会は三療法士会と共同して改善対策に取り組んできた。今回は、2014年診療報酬改定を念頭に、先述の課題を中心としたリハビリの状況を調査し、現場の実態を踏まえた改定となるよう、広く周知・活用することを目的としてアンケートを実施した(詳細は、後日グリーンペーパーに掲載予定)。

リハビリテーション点数に関するアンケート調査結果

調査期間:7月22日〜8月2日
調査対象:京都府内の疾患別リハビリテーション料届出175医療機関(病院119、診療所56)
回収数:83(回収率:全体47.4%、病院59.7%、診療所21.4%)
方  法:調査票によるアンケート方式

1.維持期リハビリの半数以上が高齢者

 疾患別リハを行っている患者12,735人(図1)のうち、算定日数上限を超えてリハビリを行っている患者は4,326人(34.0%)(図2)であった。また、このうち月13単位までの維持期リハを行っている患者は3,132人(72.4%)(図3)で、さらにこのうちの1,702人(54.3%)(図4)が65歳以上の高齢者であった。

 一方、高齢者で維持期リハを行っている患者のうち、介護保険のリハビリへの移行が予定されている患者は、脳血管疾患等リハで106人(15.0%)、運動器リハで90人(9.1%)と一部に留まった(図5)


2.介護保険リハの大幅拡大は見込めず

 介護保険のリハビリ(通所リハ・訪問リハ)は45%で実施(図6)。類型別では通所リハが54%、訪問リハが81%で、通所リハと訪問リハの両方を行っているところも35%あった。通所リハの類型では短時間型よりそれ以外の方が多かった。

 一方で、介護保険のリハビリを行っていない施設の今後の実施予定は、「予定している」が13%に留まった(図7)

3.2012年のリハビリ改定には納得できない

 2012年の診療報酬改定において、脳血管疾患等リハ・運動器リハの要介護被保険者に対する維持期リハの点数が引き下げられたことについては、65%が「医学的に根拠がなく納得できない」と答えた(図8)。この要介護被保険者に対する維持期リハの点数が、原則2014年3月31日をもって算定ができなくなることについても、75%が「医学的に根拠がなく納得できない」と答えている(図9)

4.廃用症候群に対するリハビリの正当な評価を

 脳血管疾患等リハの廃用症候群の割合は増えつつある(図10)。また、廃用に至る原疾患は非常に多岐にわたっている(表1)。心臓病名やがん病名も多く、心大血管リハやがん患者リハを実施していない医療機関でも、当該疾患を原因とする廃用状態を廃用症候群でリハビリを実施せざるを得ない現状や、皮膚科疾患や認知症、慢性疾患など、疾患別リハ体系では分類ができない疾患が原因の廃用状態を廃用症候群でリハビリを実施せざるを得ない現状が見える。

表1 廃用に至った原疾患

心不全、心房細動、心筋梗塞、急性胃腸炎、出血性胃潰瘍、消化管出血、イレウス、偽性イレウス、S状結腸軸捻転、大腸炎、下血、肝硬変、閉塞性黄疸、急性胆嚢炎、胆管炎、総胆管結石、膵炎、腎不全、急性腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、出血性膀胱炎、尿路感染症、敗血症、急性細菌性髄膜炎、褥瘡感染、蜂窩織炎、下肢膿瘍、腹膜炎、化膿性脊椎炎、貧血(悪性貧血)、低カリウム血症、ビタミンB欠乏症、低酸素血症、がん(胃がん、多発性骨転移がん、幽門前庭部がん、S状結腸がん、大腸早期がん、肝がん、膵頭部癌、膀胱がん、子宮がん、末期がん、悪性腫瘍への放射線化学療法後)、糖尿病、COPD、ASO、大動脈解離、脱水症、脱水症低血糖、熱発、不明熱、めまい、症候性てんかん、ポリオ、熱中症、食欲不振(低栄養)、転倒(骨折を伴わないもの)後安静臥床、認知症、横紋筋融解症、意識障害(原因不明)、肺胞出血、うつ病 等

 この廃用症候群でのリハビリ点数は、2008年の診療報酬改定において「廃用症候群に係る評価表」の添付が必要となり、2010年の診療報酬改定においては、廃用症候群以外の場合より10点引き下げ(?を除く)られるなど、積極的に評価をされているとは言い難い取り扱いがなされてきた。こういったことを含めた廃用症候群でのリハに対する自由意見を聞いた。

 「廃用症候群のリハビリを重要と考えていない」「正当な疾患に対する、正当なリハビリ実施を、正当に認めて頂きたい」との、きちんとした評価を求める意見。「現在、リハ科に依頼される疾患は多種多様であり、これを4つの疾患別リハに分けること自体が困難となってきている。廃用の原疾患の適応を広くしてほしい」との多様な廃用状態への対応を求める意見。「廃用症候群に陥ることを防ぐことは医学的に重要であるにもかかわらず、書類の煩雑化などがみられ、廃用症候群へのリハビリを抑制するような制度である」「廃用症候群が進まないうちにリハの介入が必要。廃用症候群の予防が目的でのリハ介入ができるようにしてほしい」との廃用を防ぐための介入ができる制度を求める意見などが挙がった。

 一方で、廃用症候群の場合の算定において、不適切な運用が一部で見られたことへの反省も必要との意見もあった。

5.外来リハ診療料の改善を

 外来リハ診療料の届出医療機関は39%であったが、そのうちほとんどの患者に算定している医療機関は41%であった(図11)。「点数が低いこと」と「リハビリ実施ごとにカンファレンスが必要なこと」が算定に際しての課題となっているとの回答が多く、また自由意見では、算定期間が厳密に定められているので、それに病院・患者双方の都合が合わせられずリハビリが実施できないケースがあるとの意見もあった。

6.見えてきた改定への課題

 維持期リハを実施している65歳以上の高齢者は現時点で1,702人であった。維持期リハを行っている高齢者と一言で言っても、原疾患や重症度の違いによって、継続的なリハビリの必要性の程度はさまざまであろう。また、どれくらいの患者が実際に要介護被保険者になるかも分からないが、これらすべての患者が、2014年4月1日を迎えるときに問題なくリハビリを終了している、あるいは介護保険のリハビリに移行できていると言い切ることは不可能であろう。介護保険のリハビリ充実の見通しについても、現在介護保険のリハビリを行っていない医療機関のうち、今後実施する予定があると答えたところは13%に留まっている。このような状況において、2014年3月31日をもって医療保険での算定を打ち切ることは到底できない判断である。

 続いて、脳血管疾患等リハでの廃用症候群の場合については、そもそも廃用症候群に対するリハビリが正当に評価されていない。廃用症候群の場合だけなぜ点数が低いのか。なぜ、別に「評価表」の添付が必要なのか。ますます高齢化が進む中で廃用症候群に適切に対応することの重要性は高まるばかりであるのに、まるで廃用症候群での算定を諦めさせるような取り扱いがなされ現場の意欲が保てなくなりつつある。また、現在の点数表では、廃用症候群の場合は「外科手術又は肺炎等」が原因の廃用が対象とのみ記されており、一般には急性疾患によるものを対象とすると解されている。一方で急性疾患とは言い切れない多様な原疾患による廃用状態があり、それに対しては廃用症候群の場合で算定せざるを得ない。一方で、廃用症候群の場合は治療開始時の状態がFIM115以下、BI85以下である必要がある。これは、そこまで状態が悪化するのを待たなければリハビリを開始できないとも言え、廃用を予防するためのリハビリを実施することを難しくしている。

 廃用症候群の場合を算定するにあたり、不適切な運用が一部で行われていたことは反省をすべきである。しかし、そういったルール違反を防ぐことを目的に、これまでの改定同様に、より厳しい算定要件が課されるとすれば、現場はいよいよ廃用症候群に対するリハビリを放棄せざるを得なくなる。明らかになった課題を解決し、現場が真正面から廃用症候群にアプローチできる制度への改善が必要だ。

 2012年改定では、毎回の医師の診察を必要としない外来リハビリテーション診療料が創設された。これは我々も実現を要求していた内容で、点数が実現したことは歓迎をしている。しかし外来リハ診療料の届出医療機関は39%に留まり、そのうち、ほとんどの患者に算定している医療機関は41%である。もちろん、外来患者のすべてが同診療料の算定対象となる患者とは限らないが、「点数が低いこと」「リハビリ実施ごとにカンファレンスが必要なこと」等が算定に際しての課題となっているとの回答が多く、また自由意見では、算定期間が厳密に定められているので、病院・患者双方の都合が合わせられずリハビリが実施できないケースがあるとの意見もあるなど、まだまだ改善の余地は大きいと考える。

 アンケート結果から見えてくる課題はこれらに留まらないが、差し迫った2014年改定にあたって、特に2012年改定の内容と附帯意見に関わる取り扱いは、現場の実態に即した対応が必要である。

 今後、マスコミ・関係機関に調査結果を周知するとともに、調査結果に基づいた要望書を厚労大臣等に提出することを予定している。

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