診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画 第三弾  PDF

診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画 第三弾

2病院で病床閉鎖の危機!! 管理栄養士配置完全義務化で厚労大臣らに要請書を提出

▼状況は何ら変わっていない▼

 約1年前に実施した同様の調査と比較したが、回答の内容に大きな変化は見られない。

 管理栄養士の配置状況は、後退はしていないが、劇的に増加もしていない。配置できないでいる病院は、依然未配置のままであることが明らかとなった。また、常勤の管理栄養士配置が一定(85%)行われている小規模病院であっても、管理栄養士配置「義務化」に賛成ということではなく、患者の数や特性に応じて必要な場合に配置すればよいという考え方である。配置できればそれに越したことはないが、できなければ医師等他の職種で対応すればよく、これまでもそうしてきたからである。

▼「義務化」三つの問題▼

 管理栄養士配置の義務化には三つの問題がある。(1)必要性の問題、(2)人材確保の問題、(3)コストの問題、である。

 (1)は、栄養管理が絶対に管理栄養士でなければならない業務内容かということである。管理栄養士は国家資格ではあるが業務独占の資格ではない。病院の規模等により管理栄養士が配置できないのであれば、医師等の他の職種が栄養管理を行えばよいし、行わなければならない。つまり、人員配置を義務化する必要があるのか、という問題である。

 (2)は、管理栄養士が都市部とそれ以外とで偏在しているのではないか、という問題である。断定できないのは、管理栄養士の実稼働人数を、国も日本栄養士会も把握できておらず、「義務化」に必要な稼働人員が確保できているのかどうかすらわからないからである。どれだけの人材があるのか、義務化しても社会的な混乱が起こらないか、など十分検討された上での義務化ではない、という問題である。

 (3)は、2012年4月改定で、栄養管理実施および管理栄養士配置義務化に伴い引き上げられた診療報酬が、患者1人当たり1日110円と、非常に安価であったことである。管理栄養士1人を雇用するのに仮に30万円かかると想定し、それを引き上げ分で賄おうとすると、病床が90床以上は必要である(30万円÷110円÷30日=90.9床)。1日患者1人当たり110円の引き上げでは、60床以下の小規模病院にとっては、赤字要因を増やすことになり、病院の存続を危ぶませることになりかねない。

▼病床閉鎖の危機▼

 また、今回の調査では、二つの病院が、管理栄養士配置が義務化されたら入院機能を閉鎖することを考慮すると誠に衝撃的な回答をした。完全義務化の期日が迫る中、そのような回答をせざるを得ない状況にまで追い込まれていると考えられる。この義務化が地域医療から病床を取り上げる、あるいは小さな病院から病床を取り上げるという目的を持った政策であれば「成功」と言えるだろうが、地域医療に及ぼす影響は甚大である。

 患者の回復を促す、あるいは悪化を防ぐための「栄養管理」は必要である。しかし、それに伴い一律に「管理栄養士配置を義務化」してしまうことは、甚だ疑問である。病床の規模や、入院している患者の状況等を全く勘案せず、「病院」というくくりで、大学病院等の特定機能病院と、60床以下の小規模病院とを同じ扱いにしているのが問題である。少なくとも、60床以下の病院に対しては、有床診療所とともに、管理栄養士配置の義務化を取りやめるべきである。

▼「要請書」を提出▼

 以上のような調査結果を受け、協会では10月8日、「小規模病院に対する管理栄養士配置義務化の撤回を求める緊急要請書」を、田村憲久厚生労働大臣らに提出した。要請書では、病院一律に、管理栄養士配置を義務付けることは、(1)必要性、(2)人材確保、(3)コスト、以上三つの面から問題であるとし「有床診療所に対してはもちろん、小規模病院についても、栄養管理体制の実施にあたって、常勤・非常勤にかかわらず管理栄養士配置の義務化は止め、必要な場合にのみ配置することでよいとすること」を要請した。

管理栄養士配置に係るアンケート調査結果―2012年5月調査と比較して(2013年8月30日現在)

[アンケート調査実施方法等]

実施期間:2013年8月7日〜8月30日
対  象:京都府内の60床以下の小規模病院(30病院)
回  答:20病院(回収率:67%)
目  的:管理栄養士の配置状況と配置義務化への考えを明らかにする(1年前とも比較)
方  法:質問票によるアンケート調査(質問票を郵送により送付し、郵送またはファクスにて回収)
 

(参考:前回調査)
実施期間:2012年5月17日〜6月21日
対  象:京都府内の200床未満病院および有床診療所(250医療機関)
回  答:79医療機関(回収率:32%)(うち60床以下の病院は、14病院)
方  法:今回と同様

1.回答病院の主たる入院診療科

 回答を寄せた小規模病院で、主たる入院診療科は(図1)の通りであった。

 今回も前回と同じく、内科との回答が最も多かった(11病院、55%)。整形外科(3病院、15%)、産婦人科(2病院、10%)が続き、複数病院からの回答があった。

2.「管理栄養士」の配置状況

 管理栄養士の配置状況を尋ねたところ、最も多かったのは、前回同様「常勤管理栄養士1人配置」であった(14病院、70%)。一方、前回は皆無であった「常勤管理栄養士2人以上配置」と回答した病院が3あり、病院によっては常勤管理栄養士配置を進めているとも考えられた。

 しかし「管理栄養士配置なし」との回答が、前回同様、2病院あり、全体に占める割合は減っているものの、1年以上経っても、常勤管理栄養士を配置できていない病院が存在することがわかった。また「非常勤管理栄養士のみ配置」の病院も今回は1あった(図2)。

 病院であっても、管理栄養士配置がないところがあるという実態が、前回調査同様明らかとなった。

3.「栄養管理」が必要な患者数

 次に、各病院の入院患者のうち、栄養管理を行う必要がある患者の程度を尋ねた。全くいないという回答は前回同様皆無であったが、「あまりいない」(6病院、30%)から、「ほぼ全て」(3病院、15%)まで、ばらつきがあった(図3)。

 病院によって「栄養管理」が必要な患者数が異なることが、前回調査に引き続き明らかとなった。

4.「栄養管理」は「管理栄養士」でなければできないか

 次に、「栄養管理」は管理栄養士がいないとできないかを尋ねた。「管理栄養士がいないとできない」(13病院、65%)と回答した病院が最も多く、前回調査よりも割合は増えている。また、「管理栄養士がいてもよいが、医師によりできる」(5病院、25%)、少数だが「管理栄養士は全く必要でない」(2病院、10%)となった(図4)。栄養管理を行う専門職種としての管理栄養士の認知度が上がると同時に、一方で、管理栄養士がいなくても栄養管理は行い得るという意見も見られたことになる。

 病院に、管理栄養士がすでに配置されていれば、栄養管理を行う専門職種として力を発揮していると考えられることから、管理栄養士の配置の有無が回答に大きく影響すると考えられる。常勤の管理栄養士をすでに配置している病院は、17病院、85%あるが、栄養管理は「管理栄養士がいないとできない」との回答数は、それを下回った(13病院、65%)。専門職種ではあるものの、業務独占の国家資格ではないことが回答に表れている可能性がある。また、病院の業務分担の状況を反映しているとも考えられた。

5.入院医療機関における「管理栄養士」配置についてどう考えるか

 また「入院医療機関における管理栄養士の配置についてどう考えるか」尋ねた。最も多かったのは「患者の数や特性に応じて、必要な場合に配置するようにすればよい」(15病院、75%)という回答だった(図5)。この傾向は、前回調査と同様である。

 たとえ85%の病院で常勤の管理栄養士が配置されていても、必要に応じて配置すればよいとの考えが多数となった。それぞれの病院にはそれぞれの状況があるという認識が示されたと考えられる。

6.「管理栄養士配置義務化」のままで入院医療は継続するか

 さらに「管理栄養士配置義務化」のままで、入院医療を継続するかどうかを尋ねた。前回調査では回答した全病院が「もちろん継続する」とした。今回調査においても、最も多い回答は「もちろん継続する」(17病院、85%)であったが、「入院医療をやめることを考慮する」と回答した病院が2病院あったことが特筆に値する(図6)。

 調査の対象は60床以下の小規模病院である。病床規模はもちろん有床診療所よりは大きいが、数百床ある病院に比べれば規模は随分と小さい。「管理栄養士配置義務化」が完全実施されることが刻一刻と近づく中、「入院医療をやめることを考慮する」方向に気持ちが傾いている病院があることは、地域医療に及ぼす影響を考えると、極めて残念なことである。

ページの先頭へ