診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画 第二弾 在宅療養支援診療所・病院へのアンケート  PDF

診療報酬改善要求に向けた連続アンケート調査企画
第二弾 在宅療養支援診療所・病院へのアンケート

在宅医療におけるキーポイントは連携するパートナー(医療機関)探しとカンファレンス

 厚労省は「税と社会保障の一体改革」の一環として行われた2012年度診療報酬改定において、「入院から在宅へ」の流れを強めた。そのため、患者は医療機関や施設から在宅へ帰らざるをえない状況があり、在宅における患者の医療の確保には在宅医療の充実が求められる。改定では従来からの在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院(以下、支援診等3)に加え、機能強化型の支援診・支援病(以下、支援診等1もしくは2)が新設された。支援診等同士が連携して支援診等1や2に区分変更すれば、より高い点数を算定できる。厚労省は支援診等1や2を広げたいようだが、施設基準をクリアするためにはさまざまなハードルがあり、京都府では改定後に支援診等3(2012年3月現在、321医療機関)から支援診等1もしくは2に区分変更した医療機関は98医療機関となっている(2013年8月現在。近畿厚生局京都事務所HPより協会調べ)。

 協会では、支援診等における実態を把握し、在宅医療の推進、連携に向けての課題を明らかにすることを目的として、支援診等の届出を行っている医療機関を対象にアンケートを実施した。

[アンケート実施方法等]

実施期間 2013年7月16日〜8月2日 対 象:316医療機関

回 答 133医療機関(回答率42.1%)(うち有効回答は131)

目 的 在宅療養支援診療所・病院における実態を把握し、在宅医療連携における課題とニーズを明らかにする

方 法 質問票によるアンケート調査(郵送にて送付し、郵送にて回収)

1.基礎データ

 有効回答131医療機関のうち、診療所90.1%、病院9.9%となった。主な診療科(複数回答)は、支援診では内科が78.8%と最も高く、外科が17.8%と続いた。病院も内科が100.0%で、次いで外科69.2%となった。
支援診の区分は、1が0.8%、2が28.0%、3が71.2%であり、支援病の区分は1が23.1%、2が46.2%、3が30.8%となった。

2.「病床なし」の支援診2では、68%が「病床あり」に変更希望

 支援診1や2では、連携グループ内に病床を持つ医療機関がある場合(以下、「病床あり」)は、連携グループに病床を持つ医療機関がない場合(以下、「病床なし」)より在宅時医学総合管理料等(以下、在医総管等)においてより高い点数が算定できる。支援診2のうち、「病床あり」は、39.4%、「病床なし」は60.6%であり(図1)、後者のうち65.0%が「連携先が見つかれば病床ありの点数を算定したい」もしくは「連携先によっては病床ありの点数を算定したい」と回答した(図2)。

3.支援診等2―「月1回以上のカンファレンス」が課題

 支援診2において区分変更を行ったことで良かった点は、「診療報酬が上がった」が63.6%で最も高く、次いで「コメディカルを含めた連携の輪が広がった」が36.4%となった。支援病2においても、「診療報酬が上がった」「他医師との連携により、医療の幅が広がった」が33.3%となるなど、診療報酬が上がったことはもちろん、在宅医療における連携の輪が広がったことがメリットとされた(図3)。

 一方で課題については、支援診2では「月1回以上のカンファレンスの開催が大変」が60.6%と最も高く、次いで「患者の自己負担額が増えた」が39.4%と続いた。支援病2は支援診2と同様、「月1回以上のカンファレンスの開催が大変」が最も高かった(図4)。

4.支援診等3―半数以上の医療機関が「連携するパートナー」を求める

 支援診等3が、支援診等2へ区分変更しない理由を尋ねた。支援診3で最も高かったのが「連携するパートナーがいないもしくは遠い」であり、半数を超える54.2%となった。次いで、「月1回以上のカンファレンスの開催が大変」が25.4%と続いた。「複数の医師が1人の患者に携わることに抵抗がある」は8.5%にとどまった。

 支援病3では「緊急往診5件以上」「看取り実績2件以上」の要件がクリアできそうにない」が最も高く、75.0%となった(図5)。

 また、支援診3で46.8%が、支援病3で25.0%が「条件があえば支援診等2へ区分変更したい」と回答した(図6)。そのハードルとなっているのが図5で回答率が高かった「月1回以上のカンファレンス」「連携するパートナーがいない」などが考えられる。さらに、連携するにあたり、相手方の医療機関について得たい情報は、「診療時間、往診・訪問診療対応時間」が最も高く、次いで「専門分野」が続いた(図7)。連携したい診療科については、内科が56.8%と最も高く、次いで「精神科・神経科」が35.1%となった(図8)。

5.支援診等3では疲弊の声多く

 在宅医療に携わる中で、困っていることを自由記述で尋ねた。支援診等2では情報共有について「月1回以上のカンファレンスの開催が課題」とされた。一方で、「カンファレンス等による情報共有で、現状を見つめることができる」との意見もあった。

 支援診等3では、「医師単独では限界」「患者からの電話1本で飛び出さなければならない生活は長くは続けられない」「遠方に出張した時に患者が亡くなった際の死亡確認が大変」といった、疲弊する現場の声が多く挙がった。そのため、連携するパートナーを求める声もあるものの、現実との狭間で揺れる意見も多い。「24時間体制は1人では困難だが、パートナーが見つからない」「他の医療機関と連携しようにも、同じ状況で連携してもらえるか不安があるほか、合議精算の話し合いといった医師としての専門分野でない課題も多く、連携先を見つけられない」等の意見が出された。

6.連携と機能分化が進められる中で

 1人の医師が24時間体制で在宅患者を診るのは限界があり、多くの医師が他の医療機関と連携したいと考えている。そして支援診3の半数近くが支援診2への区分変更を希望していることが明らかになった。しかしながら、支援診3、支援病3ともに(1)連携するパートナーがいない(2)月1回以上のカンファレンスが難しい(3)点数算定や合議精算などの金銭的やりとりが困難などを理由に、区分変更が進んでいないことも確認できた。

 今後の診療報酬改定でも「連携」について高く評価されていくことは想像に難くない。また病床の機能分化、役割を明確化することが求められ、とりわけ中小病院や有床診療所においては在宅医療の後方支援としての病床に期待されている。今回のアンケートでも病床を持つ医療機関とのグループ連携を希望する支援診も少なくなかった。各医療機関が施設基準を理解したうえで、その方向性を検討されたい。それらの一助として協会は、施設基準の周知を行う(グリーンペーパーNo.205(9月25日発行)P42参照)ほか、上記?の医療機関同士の連携に向けて、パートナー探しのサポートができればと考えている。

 また、上記(2)のカンファレンスは、支援診等2に対する図4の回答率からも、連携における障壁となっている。そのあり方は、対面での実施だけでなく、セキュリティを確保したネットの活用や電話やメールなどでも認められるなどの柔軟な対応が求められる。上記(3)の在宅医療点数と施設基準の複雑化が、区分変更が進まない問題の根底にあることは否めず、これ以上の複雑化は連携による在宅医療の推進の妨げになりかねない。

 今回のアンケートを受け、中医協をはじめ各方面へ在宅医療における改善要請を行い、在宅患者の医療を十分に担保できる在宅医療の点数改定を求めていきつつ、今後の行方を注視していく。

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