訪問診療の別紙様式14でアンケート  PDF

訪問診療の別紙様式14でアンケート

 
要介護度3以下でも訪問診療必要な場合あり78%
 
実施期間 8月15日〜8月31日
対  象 在宅療養支援診療所もしくは病院、または在宅時医学総合管理料の届出医療機関546医療機関
回  答 104医療機関(回収率:19・0%)
方  法 質問票によるアンケート調査(郵送にて送付、回収)
 
 協会は別紙様式14について、アンケートを実施した。
 別紙様式14は、同一日に訪問診療した同一建物居住者の患者氏名、訪問診療が必要な理由等のほか、(1)診療時間(開始時刻〜終了時刻)(2)要介護度(3)認知症の日常生活自立度の記載—が求められた。この作業には膨大な時間と労力がかかるため、同一建物居住者への訪問診療のハードルが高くなり、点数引き下げも重なって、施設から医療機関が撤退する事態が起きている。9月5日事務連絡により、10月診療分から別紙様式14は実質廃止となったが、レセプトの摘要欄などへ(2)や(3)などの記載が依然求められている。
 
要介護度で線引き?
 
 これらは、次回改定において、訪問診療料の要件となる可能性が否定できない。特筆すべきは、(2)および(3)について、4月10日の事務連絡で「要介護度4以上」または「認知症の日常生活自立度判定基準におけるランク(以下、認知症ランク)㈿以上」の患者は訪問診療が必要な理由の記載が省略できる、とされたことである。このことから、厚労省は、対象患者を「要介護度4以上」または「認知症ランク㈿以上」で線引きしようとしているとも考えられ、さらに㈰についても、歯科の訪問診療ですでに診療時間20分以上との要件が導入されており、医科の訪問診療への導入も危惧される。
 本アンケートは、「要介護度4未満」または「認知症ランク㈿以上」等の患者への訪問診療の必要性の実態を把握し、そのような線引きの導入に疑問を投げかけることを目的として実施した。
 
別紙様式14「廃止すべき」86%
 
 はじめに、別紙様式14は廃止すべきかについて尋ねたところ、「廃止すべき」が、86%、「廃止すべきでない」が10%となった(図1)。
 次に、要介護度4未満でも訪問診療の必要がある患者がいるかどうかについては、78%が「いる」と回答した(図2)。具体的には、脳卒中で歩行困難な患者、運動器疾患による疼痛があり公共交通機関による受診困難な患者、外出困難なパニック障害を有する患者、がん末期で介護保険の申請をしていない患者、要介護認定を拒否している患者などが挙げられた。
 認知症ランク㈿未満でも訪問診療の必要がある患者がいるかどうかについては、76%が「いる」と回答した(図3)。具体的には、四肢が不自由で通院困難な患者、情緒不安定な患者、認知症ランク㈼〜㈽程度でも服薬管理不能、問題行動や医療、介護の協力、理解が得られない患者、がん末期の患者などが挙げられた。
 診療時間20分未満の患者でも訪問診療の必要がある患者がいるかどうかについては、81%が「いる」と回答した(図4)。具体的には、状態が安定している患者、精神状態により受診できない患者、パーキンソン病の患者などが挙げられたが、そもそも診療時間で訪問診療の必要性を判断するのはナンセンス、病態に応じて時間は変わるのが通常、訪問時間の長さではなく医療行為自体の問題といった意見も寄せられた。
 
紹介ビジネスは業者指導が最優先
 
 また、一部の不正を行う医療機関を排除するための対応については、「医療機関ではなく、業者への指導等が行える仕組みを整備すべき」との回答が78%で最も多く、次いで、「留意事項通知を重視すべき」が44%となった(図5)。自由意見では、「高齢者専用住宅等建設のハードルが低すぎる」「医療、福祉系以外の業者を排除すべき」など、紹介ビジネスが横行しないシステム創りを求める声が多く出された。
 
必要な訪問診療阻害されないよう求める
 
 以上の結果から、訪問診療の対象は要介護度や認知症ランク等で線引きできるものではないこと、また必要な時間も一律に決められるべきものではないことが明らかになった。訪問診療の必要性は、患者一人ひとりを診療する医師の医学的判断に委ねられるべきものであり、今後、それらが訪問診療の要件に導入されないよう、注視していきたい。

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