複雑で不可解、非現実的な「受診抑制政策」は即撤廃を  PDF

複雑で不可解、非現実的な「受診抑制政策」は即撤廃を

入院患者の他医療機関受診に思う

 昨年4月の診療報酬改定で、入院患者の他医療機関受診の取り扱いが変更された。もうすぐ1年になるが、会員の方々はお困りではないだろうか。私は眼科医院を開業しているが、この取り扱いに関連した症例を毎月10例ほど経験し、その都度、取り扱いに疑問を感じている。

 症例の半数は、精神科病院など眼科のない病院の入院患者である。規則に従って算定しているが、患者が入院中であることを自ら告げなかったり、紹介状を持参しないことも多い。その際には直接病院に問い合わせて入院の形態を確認、紹介状の郵送を依頼、文書で診療内容を報告、処方を指示するが、病院側が他医療機関受診の取り扱いを把握していない場合もあり、忙しい外来中の極めて煩雑な作業には時間も要する。さらに、病院側の損失等を考えると受診回数を減らさねばならず、病院で処方可能な薬剤に変更、あるいは病院に薬剤の購入を依頼する必要もあることから、その選択に制限が生じたり、必要な処方ができなかったりと、治療内容を変更せざるを得ないのが実情である。薬剤を処方した場合に処方料等を算定できないのも納得がいかない。

 以下に最近1週間に経験した例の一部を示す。

 (1)来院した入院中の患者は「眼圧が高い気がするので来た。行くなと言われているので内緒で外出して来た。先生、絶対に病院には言わないで。怒られる」と訴えた。

 病院でも他医療機関受診を抑制する動きがあるようであり、以前より当科への紹介も減っている。

 (2)DPC病院に入院している患者の家族が来院した。「家内が入院している。いつもの薬を処方してほしい。病院で主治医に話したら/眼科でもらって来い/と言われたので来た」とのこと。患者の家族には当科では処方できないことを説明、病院に直接連絡をとって処方を依頼したが、主治医は入院患者の他医療機関受診の取り扱いを全く知らないようであった。

 (3)DPC病院に入院中の患者自身が来院した。「入院中で薬がなくなった。その病院の眼科へ行ったけど、緑内障なのに眼圧も測ってくれへん。/とりあえず同じような薬だしとく/と言われて終わった。心配や」とのこと。入院すると同時に当科からの処方が勝手に中止されている場合が多いのも気になる。

 このように、今回の入院患者の他医療機関受診の取り扱いについては、入院基本料を減額される病院だけでなく、受診される側である我々開業医にとっても困惑する内容であるが、最も不利益を被っているのは、入院することによって他科の専門的な医療を自由に受けられなくなった患者である。この複雑で不可解、非現実的な「受診抑制政策」は即刻撤廃すべきある。

(京都市・眼科医)

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