被爆70年、そしてNPT再検討会議の年 核兵器廃絶のプロセスへ一歩踏み出せ  PDF

被爆70年、そしてNPT再検討会議の年 核兵器廃絶のプロセスへ一歩踏み出せ

NPTの「約束」と核兵器保有国の態度

 被爆70年目の今年は、核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議の開催年でもある。このNPTは、1970年に発効した190カ国が加盟する国際条約で、5年ごとに開かれる再検討会議がこの4月末からニューヨークで開催される。
 60年代、NPTはその出発点において、核兵器保有国である五カ国(米・ロ・英・仏・中)が自らの保有を担保する一方、他国が今後保有しないことを求める色彩が強い条約として提案された。これに対し、非保有国は「最終的な解決はすべての核兵器の廃絶しかありえず、核兵器のない世界に戻すことだ」と主張し、結果として条約第6条には「全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約※1について、誠実に交渉を行うこと」が、保有国の「約束」として盛り込まれた。以来、核兵器廃絶を求める国々やNGOの運動が、NPT再検討会議に、世界各国が揃って核兵器廃絶のプロセスを模索する最大の会議としての機能を持たせることになってきたのである。
 前回会議(10年)は、ブッシュ政権後に登場したオバマ大統領のプラハ演説が核兵器のない世界を訴える中での開催だった。しかし、この会議ではアメリカをはじめとした保有国が、21世紀中に核兵器を手放す考えのないことを露呈したのである。

核兵器保有国を追い込む新たな試み

 大きな落胆が広がる中、新たな試みが開始される。それは例え保有国が合意しなくとも、非保有国が結束して核兵器禁止条約締結を進め、核兵器を違法化する国際的なムーブメントである。こうした手法には先例がある。対人地雷禁止条約(99年発効)やクラスター爆弾禁止条約(08年発効)は保有国抜きで成立した条約である。また、14年4月には、マーシャル諸島共和国が、九つの核保有国(NPT加盟国は条約義務違反、未加盟国は慣習国際法違反)を世界法廷(ハーグの国際司法裁判所)に提訴。様々なプロセスで保有国を追い込め、核兵器廃絶を目指す動きがうねりを起こそうとしているのである。 
 こうした中、唯一の被爆国である日本政府が、核兵器廃絶をリードせず、むしろ、集団的自衛権の行使に踏み切ろうとし、今再び戦争への道を歩み始めていることに内外から厳しい批判が寄せられている。

スティーブン・リーパー氏が語ったこと

 京都府保険医協会も実行委員会に参加し、反核京都医師の会(IPPNW京都府支部)が事務局を担う実行委員会「核兵器廃絶京都アクション2015」(14年5月結成・京都で「核兵器廃絶」を求める13団体とオブサーバー加盟1団体で構成)は14年11月13日、龍谷大学アバンティ響都ホールで、前広島平和文化センター理事長であり、国際的な平和運動家であるスティーブン・リーパー氏を招聘した講演会※2を開催した。
 リーパー氏は、日本政府が核兵器廃絶をめぐり「運動を弱める」役割を果たしていると指摘した。(原爆の惨禍を体験した)日本は人道上の問題を知る国として、核兵器の存在によってもたらされる人道上の問題を解決する立場にある。日本政府が真摯に誠実に核兵器廃絶のために働く、人道上の運動の一員となる必要性を強く訴えた。 
 核兵器廃絶を求める私たちは、世界各国に訴えるだけでは足りず、自国政府を核兵器廃絶の道筋へ立たせること、そのために、身近な地方自治体レベルからの行動が必要であることを痛感させる指摘であった。
 NPT再検討会議に向けて残された時間は少ない。世界中で繰り広げられる核兵器廃絶に向けた努力が実り、今会議が核兵器廃絶への現実的なプロセスへの飛躍的一歩となるよう、私たちができることをやらねばならない。核兵器廃絶京都アクションでは、「古都・京都から核兵器廃絶に向けた世界の人びとへのアピール」運動を呼びかけている。
 ※1 外務省訳。条文中の「軍備縮小」との用語について、リーパー氏は「軍備撤廃」と訳している。
 ※2 リーパー氏の講演抄録は「反核京都医師の会ニュース48号」(本紙前号付録)に掲載。本文中のNPTに関する分析にあたっては同氏の著書『日本が世界を救う 核をなくすベストシナリオ』(燦葉出版社・刊)を参照させていただいた。

ページの先頭へ