被災者の医療保障で要望 12年度の診療・介護報酬改定凍結も  PDF

被災者の医療保障で要望 12年度の診療・介護報酬改定凍結も

 東日本大震災の発生から1カ月が経過、わが国は戦後最大の危機の真只中にある。この状況下、協会は4月12日の定例理事会で、復興を最優先させるため2012年度の診療報酬・介護報酬同時改定を凍結させることなどを求める「理事会アピール」および「福島原発事故に関する緊急声明」を取りまとめた(2面に全文)。

 理事会アピールは、この間の医療費抑制策が招いた地域医療の崩壊を回復させるには大幅な報酬引き上げを求めるべきところであるが、この国難にあたって、復興支援や被災者の医療保障を優先的に求める考えを示した。具体的には、(1)12年度の診療報酬・介護報酬同時改定を凍結(延期)、(2)被災者の医療を全額国庫負担による公費負担医療制度として創設――を求めた。

 (2)については、これに先立ち「被災者の医療保障に関する緊急要望」として8日に菅首相宛に提出した。

 現在、地震被災者が医療機関にかかった際は、一部負担金徴収猶予等の取扱い(3月23日事務連絡)により、災害救助法適用市町村であり、住家の全半壊等の申立てをした者等については、5月末日まで一部負担金の支払いを猶予する取扱いとされている。(グリーンペーパー、協会ホームページに掲載。被災者窓口負担確認用の問診表も掲載中)。また報道によると、政府が今月中に国会提出を目指す第一次補正予算に、被災者の一部負担金と保険料を国費で負担する方針で、医療・介護総額で1000億円が見込まれている。

 緊急要望は、政府が被災者の医療・介護保障に柔軟な対応を行っていることを評価しつつも、このような災害による非常事態時には、従来の保険制度の枠組みを超えた医療保障の仕組みを公費負担医療として創設することを求めた。さらに、現状での取扱いは、医療機関が窓口で患者の「判定」を任されることにもなり、心理的・実務的負担も大きくなっていることから、公費負担医療の対象は基本的に被災地域の住民または旅行者であることのみを条件とすることとした。また、公費負担の範囲については、被災地域の保険者にかかる負担を考え、一部負担金部分だけに限定せず、医療費の全額を国庫負担とするよう要望した。

 震災に関連して協会はこの間、医薬品安定供給に関して以下の緊急要請を菅首相、細川厚労相宛に行っている。(1)チラージンSの緊急輸入、海外支援要請(3月17日)、(2)エンシュア・リキッド代替品の臨時的な保険適用(4月4日)―。(1)は厚労省の要請で緊急輸入した製品の出荷がすでに始まっている。(2)は生活保護受給者には一時的措置として、実質相当額が給付されることになった。

 また、被災者が避難先で予防接種を受ける取扱いについて、府内市町村の差異の状況を調査中である。

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