自由詩コーナー
谷口 謙 選
ひ
門林岩雄
ひかりのなかに
詩をおこう
ささやかな詩を……
きづいてくれる
ひとはなくても
風
枯葉が石垣のぼってゆき
途中でついに力つきた
鯉
加藤善郎
池の中でひっそりと群れていた紅い鯉
土間には積み上げられた伴出の五穀
出来が良かったとか悪かったとか
声高に言い合っていたいつもの群れ
鎮まったのはラジオが伝えた日米開戦
呟いたのは三国同盟の吉と凶
やがてあの群れが送り込まれていった
南洋の島々 北洋の島……
そして消息は霧散のまま
過ぎ去った容赦なき歳月
今 無性に懐かしいあの喧噪
在るのだろうか
群れていたあの紅い鯉
星座図鑑(65)おおいぬ座
m.
今日はいいことなかったなあ
ふと夜空を見上げると
ひときわ明るい星
あの星
名前、何っていったけなあ:
学校で習ったよな
思い出せない
ま、いいか
とぼとぼ歩く夜道
山の向こう
星の数は増えている
「詩とはなにか/それは単純に解決のない問いだ この問いが ひたすら垂直に地芯まで下り行かんことを」(有田忠郎)。
常連の3人の詩がそれぞれの個性を示され、充実した号になったことを嬉しく思います。有田氏のおっしゃる通り、直に地芯まで、つまり魂の、個性の深く通過することを祈ります。今号はいい作品がそろい、選者として嬉しゅうございました。どうか一段のご精進を。
<応募要領>◇字数:原稿用紙1〜1枚半◇未発表のもの。応募作品は返却しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月20日締切◇第1席入選者には図書カード贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります。
【京都保険医新聞第2648号_2008年7月21日_3面】