自由詩コーナー 谷口 謙 選
目 門林岩雄
丸い大きな目で
じっと見られた
はずかしいよ
あかちゃん――
なんのとりえもない
年よりだから
陵<ルビ/みささぎ>のとなり
畑の中に
大きな木
なんの木だろう?
見上げれば 昼の月
視 加藤善郎
沢山の物を視た
父の背 母の乳房
流れる雲と川
受け入れる山と海
動くものも動かないものも
視えないものも
いろいろと工夫して視た
足下の微生物も
赤と紫の外も視た
シビアに ロマンに…
今は瞳を絞って
宇宙の輪廻を視つめてる
星座図鑑(74)さいだん座 m.
深い森の中
闇の中を進む
と
視界が開けた
満点の星
こんなにたくさん星があるんだ
あとで調べると
私がその時見た中に
この星座はなかった
そんなことはどうでもいい
あんなに幾多の
星が瞬いて
歓迎を受けたことを
私は忘れない
「鏡を見て、鏡に写る自分は客観である。絶対の主観は鏡そのものである。鏡はすべてのものを映していくが、鏡みずからを映すことができない。その何ものにも映すことのできない主観が、絶対の主観であり、それが諸仏の真源である」(松本顯龍)
仏教哲学者の言葉かと思いますが、鏡を詩と置きかえてみたらどうでしょう。絶対の主観とは絶対の自己主張の詩の意味でしょうか。詩とはそれぞれの人が書かねばならぬ、その人の主観です。