脳卒中後遺症・認知症の対象除外は何だったのか
障害者施設等入院基本料等の改定を振り返る/下
「障害者施設等入院基本料(以下「障害者病棟」)」の改定から1年。当該障害者病棟を算定している、あるいは算定していた病院から、改定が与えた影響と現状を聞き、改定の意味を問う第2弾。今回は京都民医連中央病院を取材した。
障害者病棟を一般病棟へ転換
京都民医連中央病院は、中京区の西部に位置し、救急医療から地域連携までを実践する基幹病院的存在である。病床数は300。現在は一般病棟258床、回復期リハビリテーション病棟42床からなる。以前は障害者病棟51床を持ち合わせていたが、7対1看護を実施する一般病棟に転換したという。
患者をどうするか
「『転換』は2008年10月改定よりも以前に行った。06年4月に当院がDPC対象病院となった際、病院の方針として病床の急性期化を進めることとなっていた。08年10月改定の内容が示されたことが、『転換』の契機となった」と担当者は話す。障害者病棟も医療法上は一般病床扱いであるが、入院の対象となる患者が診療報酬点数表上規定されていること、平均在院日数のしばりが設定されていないことなどから、いわゆる急性期の一般病床とは入院患者の層が異なる。7対1の一般病棟に「転換」するとなると、すべての患者が引き続き同じ病床に入院し続けることは不可能に近い。いったいどのように対応されたのか。
病病連携の実践
「幸い近隣に、同一法人の上京病院があった。確かに急激に入院患者層を変化させることは不可能であるが、障害者病棟のみを保持する上京病院と連携し、それぞれの形態に合った患者を互いに紹介し合った」という。同一法人であり、かつ地理的にも近いという利点を活かした、まさに病病連携である。一方で「もし当院だけでの対応を迫られていたら相当苦労することになっただろうし、例えば小規模の病院単独で対応するとなれば、さらに苦悩は増しただろう」とも。
対象患者7割以上入院というハードル
「転換」前の障害者病棟の運営は順調であったという。「対象患者7割以上入院というハードルはクリアしていた。08年10月改定以後も障害者病棟を運営するという選択をしていたら、その基準を満たしているかどうか、常に心配しながらの病棟運営となっただろう」と話す。各病院による入院患者層の差異はあるものの、一定数は障害の原因が脳卒中後遺症などである患者が入院する病棟となっていたことがわかる。
何のための改定だったのか
前回取材の病院に引き続き、同じ問いをしたが、やはり「脳卒中後遺症や認知症の重度肢体不自由が、他の疾患のそれとは異なるとされた根拠はわからない」とのこと。「政策に一貫性がなく、エビデンスがないことの表れではないか。改定の原資を作るための改定であったのだろう」との見方を示された。次回改定に関しては「医療分野は民間への依存度が高い。民間病院がしっかり運営できるよう経営面での保障をしなければ、結局のところ患者へのしわ寄せとなる」「それぞれの医療機関が担っている役割が報われるような診療報酬改定を期待したい」と話された。
取材を終えて
その根拠が不明なまま、08年10月、障害者病棟の入院対象から脳卒中後遺症等の患者が除外されるなどした改定を検証するため、その当事者となった病院2カ所を取材した。改定から1年たった今も、後期高齢者を75歳で区切ったことと同様、その医学的根拠は示されず、不明なままである。10年4月には診療報酬改定が予定されているが、最低限守ってもらうべきことは、患者を制度により振り回さないという見識ではなかろうか。