耳鼻咽喉科診療内容向上会レポート
結核の診断と治療を学ぶ
耳鼻科診療内容向上会のもよう
第41回耳鼻咽喉科診療内容向上会が6月14日、京都府耳鼻咽喉科専門医会、京都府保険医協会、シェリング・プラウ株式会社の共催で開催された。専門医会の豊田弥八郎会長と協会の関浩理事長の挨拶の後、講演会を行った。
講演のテーマは結核であり、京都市立病院呼吸器内科医長の中村敬哉先生と京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室講師の中井茂先生にご講演頂きました。
まず中村先生から、「肺結核症の診療のポイント」と題してお話がありました。講演は、肺結核の基本知識から始まり、日本の現状、続いて診断と治療についてのお話があり、最後に京都市立病院の多くの症例を提示して頂きました。診断についてのポイントは、胸部X線検査の異常があれば、ツベルクリン反応や、Quantiferon-TB(QFT)にて陽陰性の判断を行い、最終的には喀痰の塗抹や培養、PCR法を用いて抗酸菌陽性であれば確定診断とすることです。最近開発されたQuantiferon-TB(QFT)は結核菌に含まれる蛋白質のうち、BCGに含まれないものを抗原として、被験者血液中のT細胞を刺激して産生されたγ-IFNの量を測定するものです。この検査法の長所は、通常の血液検査で行うことができる簡易な検査法であることやBCG接種の影響を受けないことですが、短所は既感染者では陽性となるので高齢者では結果の評価が難しいということです。治療は計6カ月抗結核薬の内服を行うのが基本的な方法であり、耐性菌を増やさないために服薬指導を行っていることをお話しされました。最後に結核予防法が05年に改正されて結核が、感染症法・2類感染症に位置づけられている点を強調されました。
次に耳鼻咽喉科の立場から、中井茂先生に「耳鼻咽喉科診療における結核病変」としてご講演頂きました。耳鼻咽喉科領域での結核の発生部位は喉頭・頸部リンパ節などの肺外結核であり、それらの早期診断には臨床的な特徴を知り、疑うことが重要であると強調されました。特に喉頭結核は、症状が嗄声、嚥下時痛、咳嗽などであり、声帯、仮声帯、喉頭蓋に白苔、浮腫を伴う肉芽腫性病変を呈することから、喉頭癌を疑って施行された生検の後に喉頭結核と診断されることが多く、実際に先生が経験された症例に生検で診断が確定したものがあるそうです。診断のポイントとして、既往歴や家族歴の問診と、胸部X線写真が有用であると示されました。一方、頸部リンパ節結核は、数カ月で徐々に増大するリンパ節腫大が主症状ですが、頸部エコーと針生検で診断がつかず、悪性腫瘍を疑い生検を行った例があるそうです。提示された症例も胸部X線検査は正常でしたが、生検で特徴的な病理組織と結核菌が証明されて診断が確定した例でした。喉頭結核、頸部リンパ節結核について実際の症例を提示して頂き、分かりやすい解説をして下さいました。会場からは、活発な質疑応答が行われました。(下西・兵 佐和子)
【京都保険医新聞第2657号_2008年9月22日_6面】