考察 施行前から法改定・狙われるセンシティブな医療情報  PDF

考察 施行前から法改定・狙われるセンシティブな医療情報

迫る番号通知(下)

副理事長 鈴木 卓

  この10月5日が施行日となるマイナンバー法には「この法律の施行後三年を目途として」見直しを行うと明記されている。ところが去る9月3日「マイナンバー法・個人情報保護法一括改正法(以下一括改正法)」が成立した。明らかに法律違反である。かくまでして急ぐのは何故か?この2〜3年総務省を中心に幾つも個人情報関連の「研究会」等が立ち上げられ、IT関連をはじめ様々な企業・業界が個人情報利活用の儲け話で沸いている。ところが、マイナンバー法では目的外利用が禁止されている。禁を解くべく改定を一刻も待てない駄々っ子状態なのである。「一括改正法」は日本年金機構の情報漏洩事件で今国会見送りと言われていた。マイナンバーでも同質の情報漏洩が危惧されるが、甘利大臣は「大丈夫」と見栄を切った。しかしこれはうそで、国会で向井担当官は「地方自治体事務でも起こり得る…これから人的対応や内部管理の問題への対応など各種ガイドライン等の見直しを行う」と心もとない答弁であった。それにもかかわらず急遽可決された。 

 「一括改正法」の狙いは、欧州との個人情報保護の格差(日本が遅れている)の“見せかけ的”穴埋めと医療など「要配慮個人情報」等の本人同意を不要とした目的外利用拡大の法的推進である。昨年10月の総務省「行政機関等が保有するパーソナルデータ研究会・中間整理」では「医療に関するデータについては…個人特定性を低減させたデータの活用が医療の向上のため必要、有効…個人特定性を完全に失わせるまでに加工したデータでは利用のメリットが失われてしまう」と言明している。データの分析研究で医療の質を飛躍的に向上させると謳われたレセプト等データ(NDB)は約4年で膨大な件数が収集・累積されたが、ほとんど利用されてない実態が明らかとなった。結局個人が特定されない医療データでは企業にとって何の魅力もないのである。 

 医療連携等の制度インフラとなる医療個別の番号制度は、昨年末に「医療等分野番号研究会・中間まとめ」が出され、今後法制化検討が再開されようとしている。全国共通番号など問題点もあるが、一定の情報利用制限が盛り込まれるであろう。すると政府は利用制限をすり抜けるため「医療等の個人情報を…民間事業者による新サービスの創出のためのインフラとして活用する『代理機関(仮)』構想」を閣議決定した(「日本再興戦略改訂 2015」)。利用企業には健康サービス、外食・配食事業から金融・保険会社までが群がっている。すでに世界には個人情報を種にターゲット広告の広告収入や名簿屋の情報販売で巨利を得る企業が生まれている。生命保険関係では、情報を基に保険料の引き上げや保険金支払い拒否等が懸念される。政府は、ここにしか成長戦略はないとばかりに“医療・健康・介護”を目玉にしている。まさにセンシティブな個人情報は“合法的に”利用し尽くされ、漏洩で追い打ちがかけられる風前の灯火状態である。勿論、各個人本人が意思と同意を持って関わって行くことを何ら妨げるものではない。参加・不参加はいずれにもメリットもデメリットもある。そこで、大原則とすべきことは本人の意思(途中変更もあり得る)の尊重、即ち「個人情報の自己コントロール権」の確立である。全てはここに立ち戻って制度設計を見直すべきである。

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