考察 交付を受けてはいけない「個人番号カード」 迫る番号通知(中)
副理事長 鈴木 卓
この10月からマイナンバー法の個人番号「通知カード」が世帯ごとに郵送される。この通知カードと確かに本人であることを証明するもの(運転免許証等)が行政機関の窓口で確認されれば、顔写真入りの「個人番号カード」が交付される。政府は個人番号カードの普及がマイナンバー制度成功の鍵として、郵送またはオンライン申請や、学校・企業内一括申請など色々な手を考えている。更に今後このカードのICチップを利用して保険証代わりや消費増税分還付に使われれば飛躍的に普及すると姑息な手段を捻出している。個人番号カードの情報漏洩や、なりすまし犯罪に対する国民の不信・不安を払拭すべくカードの安全性を強調しているが、例えば脅迫や偽代理による人的・物理的なりすましには解答が出されていない。
個人番号カードの管轄は国であり、自治体の交付は法定委託事務とされたことと、カード表面には必ず顔写真が入ることが住基カードと決定的に異なる。10年毎のカード更新(20歳以下は5年毎)に合わせて顔写真データベースも更新されて「地方公共団体情報システム機構」が保有し、実質的には国が照会し得る管理下に入る。マイナンバーは情報分散管理で安全だと宣伝されているが、実際には自治体間等の情報連携の“共同化・集約化”を図る口実で、クラウド内に「中間サーバー・プラットフォーム」が作られ、最終的には全自治体の全個人データ副本が収集され集中・一元照会できる裏システムがある。マイナンバー法案「大綱」で第一に取り上げられた国家一元管理に対する国民の強い懸念・不安は、全く解決されていない。
しかも法文「何人も、特定個人情報の提供をしてはならない」の例外規定として、第19条第12項で「…その他政令で定める公益上の必要があるとき」が挙げられ、この政令は2014年の第155号で「少年法、破防法」等々26項目が指定された。主に警察・公安関係には諸情報の提供が可能となる。その上、このような情報提供は「特定個人情報保護委員会」の権限が及ばないこと、その理由で「マイナポータル」にも通知されず本人チェックも不可能であることが国会で言明され、マイナポータルの安心説明と大きく食い違っている。
現在企業は、「パーソナルデータ」が儲かりのネタだとしてポイントカード等を使って諸データ(購買履歴やネット閲覧履歴、スマホGPSの位置・行動データ等々)の名寄せ・紐付け収集に躍起となっているが、このような情報や今後ますます精巧化する顔認証システム情報が「カード」の顔写真や特定個人情報と結びついた時、各個人の詳細なプロファイリングが本人不承知のうちに作られる恐怖社会が出現しかねない。
これを否とする人の個人的対抗策は、先ずは「個人番号カード」の公布を受けないことである。今後も「通知カード」と本人証明の他の何かがあれば、年数回もないであろう行政や税務の手続きは事足りる。不利・不便な面も出てくるが、自己の個人情報を守る戦いの第一歩として行動を呼びかける。