老齢加算廃止は適法「生活条件を無視せず」
/生存権訴訟で東京地裁
生活保護制度の見直しで70歳以上の高齢者に支給されていた「老齢加算」を廃止したのは「生存権」を保障した憲法に違反するとして、東京都内の70−80代の男女12人が調布市など3市7区に廃止決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は6月26日、決定は適法として請求を棄却した。
大門匡裁判長は判決理由で「老齢加算は高齢者に『特別な需要』が存在することを根拠にしているが、今の消費状況では加算が必要な需要はない。廃止決定は、現実の生活条件を無視した著しく低い基準を設定したとまでは言えず、裁量権の逸脱はない」と判断した。
各地で起こされた同種訴訟では初の判決。憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活をする権利」の侵害の有無が最大の争点だったが、判決は「加算廃止後も『最低限度の生活』の需要を満たしていないとは言えない」と指摘した。
訴えによると、老齢加算は食費や暖房費など70歳以上の保護受給者の「特別な需要」に応じて一定額を支給する制度。財政難を背景に生活保護基準が見直され老齢加算も2004年度から削減、06年度に廃止された。
1人暮らしの原告の場合は、生活費として月約9万4000円を受け取っていたが、約1万8000円の加算金が段階的に削減され、最終的に2割減の約7万6000円となった。
原告側は「交際費が大幅に減り、食費にも影響が出るなど最低限度の生活基準を下回る。暖房費を含め加算が必要な事情はなくなっていないのに、十分な検証もせずに廃止を決めた。加算廃止という結論ありきの手法で、行政裁量の乱用だ」などと主張。
自治体側は「廃止しても一定の生活水準を維持している。一般の低所得世帯では60代より70代の支出の方が少ない、という検証結果を基に十分な審議を重ねた。行政上の手続きに問題はない」と反論していた。【共同】(6/27MEDIFAXより)