緊急経済対策を閣議決定/医療・介護・福祉に1.1兆円
政府は10月8日、2010年度補正予算案に盛り込む「緊急総合経済対策」を閣議決定した。予算規模は5兆1000億円で、うち医療や介護、福祉などに1.1兆円を計上する。社会保障関連の目玉は、地域医療再生基金への約2000億円の積み増し。野田佳彦財務相は閣議後の会見で「速やかに給付の整理、予算書の作成に当たり、国会提出に向けて準備を進める」と述べた。
地域医療再生基金は、約2000億円を使って高度専門医療などを担う拠点病院を整備する。厚生労働省医政局によると、交付金を支給する個所数や額はまだ決まっていないという。
10年度で終了する妊婦健診の公費助成は基金に約100億円を積み増しして1年間延長する。合わせてHTLV−1の抗体検査を健診項目に加える。予防接種事業では子宮頸がんと、Hib(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌のワクチンを公費助成する。国と都道府県の負担割合は2分の1ずつ。対象年齢は現在、検討中で予算額はまだ確定していない。また、高齢者医療制度の負担軽減措置を継続するために2800億円を計上する。
このほか、11年度予算で要求している事業を前倒しして要求する。認知症高齢者グループホームのスプリンクラー整備や特別養護老人ホームの個室、ユニット化の改修工事などで約300億円を計上する。
24時間地域巡回型訪問サービスを整備するためのモデル事業は11年度予算で100カ所を要求していた。補正予算で30カ所を前倒しして実施するため約3億円を計上する。
また、11年度予算でたんの吸引などの医療的ケアに関する介護職員の研修を要求しているが、補正予算ではたんの吸引機の購入費用として約6億円を計上する。うつ病の医療提供体制の強化などで約7億円を計上する。
地域医療再生基金はもともと自公政権が09年度補正予算で3100億円を計上していたものを、政権交代後に民主党中心の連立政権が750億円削減した経緯があり、今回の補正予算で方針転換することになる。当時の厚労政務三役は「地域を限定して補助する方法では医師不足などの解決にはつながらない」として基金に否定的だった。
自民党と公明党が9月、政府に提出した補正予算要望では、両党とも地域医療再生交付金の拡充を求めていた。補正予算案の策定に携わった民主党議員の1人は10月6日、「95%以上、自民党、公明党の要望が入っている」と述べ、野党に配慮する「ねじれ国会」特有の補正予算案になったと解説した。(10/8・12MEDIFAXより)