緊急搬送、必ず受け入れへ/都が周産期で緊急対策、NICU退院支援も
東京都は2009年度に周産期医療の緊急対策に乗り出す。都内で妊産婦の救急搬送受け入れ拒否問題が相次いだ事態を踏まえ、緊急搬送依頼を必ず受け入れる「母体救命対応の総合周産期母子医療センター(仮称)」や、 満床状態が受け入れ拒否の一因とされる新生児特定集中治療室(NICU) からの退院促進に向けた「NICU退院支援体制検討会議(仮称)」の創設など、複数の新規事業を開始する。これらの新規事業は都の09年度予算案に盛り込んでおり、18日から始まる都議会の議決を経て決定する。
都によるとハイリスク児である低出生体重児数は、都内では1990年の6768人から06年には9564人となり1.4倍以上に増加。一方、出産を担う産科・婦人科医師数は90年の1777人から06年には1411人となり約20%減少した。都では、こうした状況が、本来ハイリスク分娩に対応する周産期母子医療センターに正常分娩が集中する事態を引き起こし、結果的にハイリスク妊婦・分娩への対応に影響を及ぼしたとみている。都は「抜本的な医師不足対策は国の責任」としながらも、即効性のある対策が必要と判断した。
緊急搬送依頼を必ず受け入れる「母体救命対応の総合周産期母子医療センター」は、08年12月に東京都周産期医療協議会が予算を先取りする形で指定を決定していた昭和大病院、日赤医療センター、日本大板橋病院の3施設を想定。救急部門などの医師との連携体制を構築するよう求める。
また、新たに「母体・新生児搬送受入コーディネーター」(仮称)も配置する。総合周産期母子医療センターが管轄する地域内で、緊急性のある母体・新生児の受け入れ困難なケースが発生した際、ほかの地域での迅速な受け入れを調整する役割を担う。
ミドルリスクの患者を想定した「周産期連携病院」も新設する。都は施設整備などを支援し、休日・夜間の妊産婦の救急搬送受け入れ体制を確保する。
NICUについては従来の増床支援策に加え、円滑な退院を促進する取り組みを開始。新たに「NICU退院支援体制検討会議」を立ち上げ、在宅への移行を含めた退院支援体制を検討する。周産期母子医療センターの機能強化では、看護師を増員するほか、地域の医師の協力を得て休日(日直)体制を構築する計画もある。
このほか、医師不足が深刻なへき地の医療機関などに医師を派遣する「地域医療支援ドクター事業」も開始する。都が採用した医師を、周産期、小児、救急などの分野で深刻な医師不足を招いている地域に送り込む。09年度は10人程度の医師を募集する予定だ。(2/6MEDIFAXより)