精神病棟入院中の患者の他医療機関受診の必要性及び入院料の減算規定に係る緊急アンケート調査結果  PDF

精神病棟入院中の患者の他医療機関受診の必要性及び入院料の減算規定に係る緊急アンケート調査結果

精神病床の他医受診は避けられない! 減算規定撤廃を

1、調査方法

 対象は、近畿地方2府4県で、保持する病床の半数以上が精神病床である130病院。アンケートは2010年7月8日付で送付。2010年8月12日までに77病院より回答があった(回収率59%)。

2、回答病院の形態

 回答を寄せた病院は、精神病棟のみが62病院(81%)、精神病棟と一般病棟の組み合わせが7病院(9%)、精神病棟とその他病棟の組み合わせが8病院(10%)であった(図1)

(図1)

3、他医受診の必要性

 「精神病棟」に入院中の患者について、専門外等の理由による他医療機関受診が必要なケースがあるかどうかを尋ねた。

 「よくある」と回答したのは49病院(64%)、「ある」と回答したのは23医療機関(30%)、「多くはないがある」と回答したのは3医療機関(4%)であった。実に98%の病院が、他医療機関受診が必要なケースに遭遇していることがわかった(図2)

(図2)

 一方「ない」と回答したのは1病院(1%)のみであり、一般病棟を併せ持つ病院であった。

 精神病棟単独の場合と、他の病棟を併せ持つ場合とを比較した。一般病棟を併せ持つ病院の場合「よくある」という回答と「ある」という回答とが同数(3病院、43%)となった。一方、精神病棟単独の病院や、他病棟併設であっても一般病棟以外を併設している病院の場合には「よくある」との回答が、「ある」との回答を大きく上回った。精神病棟単独の病院では6割以上が、一般病棟以外を併設している病院では実に9割近くが「よくある」と回答している(図3)。精神科の専門性から、一般病棟を併設していない病院では特に、他の専門科への対応が非常に難しいという現状が結果として表れている。

(図3)

4、30%減算規定について

 次に、精神病棟入院基本料等出来高病棟入院中の患者が他医療機関を外来受診した場合、及び、精神療養病棟等包括点数を算定する病棟の患者が他医療機関を外来受診し、外来側で行った診療行為が入院料に包括されている項目でない場合、その日の入院料が30%減算されることについて、考え方を尋ねた(複数回答)。

 最も多かったのは「診療行為が重複していないのになぜ減算されるのかわからない」で、68病院(88%)が回答した。「30%減算とされている数字の根拠がわからない」も47病院(61%)あった。入院料を30%減算されるのは、医療内容が重複していない場合である。それにも関わらず、なぜ減算されるのか、「30%」という数字がどのような根拠によるものか、納得できないまま、制度に従わざるを得ず、減算請求しているのが現状である(図4)

(図4)

 一方、入院料30%減算が「妥当」であると回答した病院は皆無であった。

 なお、その他の回答が3件寄せられた。「(他医療機関受診の制限の)廃止が妥当」「病院はすべて総合診療科を持たなければならないのか」など、制度に批判的な内容であり、減算に理解を示すような内容では決してなかった。

5、70%減算について

 最後に、精神療養病棟等包括病棟入院中の患者が他医療機関を外来受診し、外来側で行われた診療行為が、入院料に包括されている場合、入院料の70%が減算されるが、実際に外来側で行われる診療行為の額は、入院料の70%に相当する額なのかどうかを尋ねた。

 外来側での診療行為が「入院料の70%に達しないことが多く、70%は減算し過ぎ」と回答したのが66病院(88%)であったが、「70%程度」「70%を上回る」と回答した病院は0であった。残り11病院は無回答もしくは回答不要(包括病棟を持たない)の病院であった。他医療機関を受診をしたとしても、外来側での診療費は入院料の70%に達していないことがほとんどであると言える(図5)

(図5)

 「70%減算」が、実際に他医療機関受診が行われた際に、外来で行われる医療内容の実態以上の額であり、必要以上に減算されていることがわかった。

6、アンケートの結果

 精神病床を中心に持つ病院では、精神科という極度な専門性から、自院で担える医療内容が自ずと限定されるため、入院中であっても他医療機関受診が必要なケースが非常に多いこと。精神病床入院中の患者がやむを得ず他医療機関を外来受診した際の入院料減算規定について、30%減算の場合はその根拠が不明なこと。70%減算の場合はその額が外来診療費の実態に相応していないこと―が明らかとなった。

7、寄せられた実際例

 保団連は、入院中の他医療機関受診の必要例や制限により困った事例の収集をこの間行っている。京都協会にも多数例寄せられ(別添資料参照)、精神科の病院からは「他医療機関で週3回程度透析治療が必要」な事例が、実際のレセプトの写しとともに寄せられた(図6)

(図6)

 通常、透析治療のみでは入院とならないため、転院できず、他医療機関受診で対応せざるを得ない事例である。患者を包括病棟から出来高病棟に転棟させ、何とか減算を30%に抑えて対応しているが、今後、透析治療が必要な患者を新規の入院で受け入れることが困難な状況である―と悲鳴を上げている。

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