精神疾患取り巻く環境を知ろう 13年度 医療安全シンポジウムを開催  PDF

精神疾患取り巻く環境を知ろう 13年度 医療安全シンポジウムを開催

 協会は3月15日、京都市内のホテルで「精神疾患が疑われる患者さんへの対処法〜精神疾患の理解を求めて」と題した医療安全シンポジウムを開催した。シンポジウムには会員や会員医療機関の従事者ら134人が参加、4人のパネリストの話題提供の後、熱心に討論・意見交換した。

「共感」することの重要性

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、患者からの相談内容とその対応法について、自らの相談対応の方針を紹介。患者の話を遮らないこと、その上で客観的な情報提供・助言をしつつも、方向付けや誘導をしないと述べた。精神疾患関連の相談は、全相談の16%を占め、薬剤・入院治療・プライバシーの問題が多い。それら相談対応の経験から、「共感」すること、「聴く」ことの重要性を強調した。

 医療機関に対しては、患者が不信感を抱く要因として、説明の不十分さや、不適切な言葉遣いが散見されること等をあげ、注意喚起した。

暴力・事故など現状の理解を

 高槻市の光愛会光愛病院外来看護師長の坂木まどか氏は、他科の医療従事者が想像するほど、精神疾患患者による暴力は多くないとデータを示して紹介。包括的暴力防止プログラム(CVPPP)や暴力への介入スキルについて解説した。さらに、身体隔離や拘束について現状を述べ、精神疾患に関して、確かな知識を有して適切に対応すれば、暴力・事故を未然に防ぐこともできると強調した。

精神疾患への偏見根強く

 医療法人高木神経科医院院長の浜垣誠司氏は、冒頭、医療界でも偏見は根強く、精神障害者はコワい、精神疾患を持った人は厄介である等のイメージがあることから、精神疾患への理解を求めた。まず、精神症状のために、他科の治療が必ずしも困難ということはなく、精神科主治医と連携することで多くが対応できる。また、自殺防止に関しては、医師が患者の話を十分に聞いた上で、自殺しないようにあえて約束させることが有効であると述べるとともに、大量服薬で自殺企図時、精神科に転院しなくても、家族との相談によっては自宅退院でよいことも十分あると報告した。

 薬物依存については、鎮痛剤や向精神薬があるが、依存症と判断したら、他の治療法を提案して、それらの薬剤を処方しないことを強調するとともに、当初は患者も執拗・威圧的であっても、多くが医師の指導に従ってもらえることを報告した。

患者の症状や行動カルテに記載を

 富永愛法律事務所弁護士の富永愛氏は、いくつかの事例を中心に精神疾患に関わる法律問題を提起した。一つは、患者の老親から、家庭内では手が付けられなくなったので入院させたいとの連絡が入った場合で、精神障害者の場合は、任意入院のみでなく、措置入院・緊急措置入院・医療保護入院・応急入院が可能であることを紹介した。

 また、患者から医療従事者が暴力や暴言を受けた場合で、医療機関側が管理責任を問われた判例を紹介した。

 次に患者の自殺について判例から、精神疾患は客観的データが乏しく、患者の症状や日頃の行動を詳細にカルテ等に記載しておかないと、事故や紛争が発生した場合に証拠が示せないことから、記録の重要性を強く訴えた。さらに、医療機関側に賠償責任が認定されたケースと認定されなかったケースを対比させながら解説した

 パネリストの発表の後、質疑応答が活発に行われた。なお、シンポジウムの詳細は冊子にまとめ、全会員に5月末ごろに発送する予定。

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