第65回定期総会(第183回定時代議員会合併)
総会 質疑応答の要旨
決議・原発問題について
島津恒敏代議員(中京西部) 決議の中の「原発に依存した国のエネルギー政策を根本的に転換すること」という項目は非常に抽象的な表現だ。福島原発事故を真剣に総括するのであれば、「転換」というようなあいまいで無責任な表現で決議すべきではない。
飯田哲夫理事 先生のご指摘に対し、全く反論はなく、大多数の理事者、そして環境対策委員はすべての原発からただちに撤退すべしと考えている。しかし、日本のエネルギー政策そのものに関わる問題であるだけに、賛同いただけるかが心許なく、こうした表現とした。今、この場で代議員の先生方に賛同いただけるなら、ご指摘のとおりに訂正したい。
門祐輔代議員(左京) 医師として、「人の命を一番大切にする」ということを明確にすることが大事であると考える。原発事故が起これば、どうしようもない状況になることが今回の福島原発事故で明らかになった。原発撤退を明確にすることには賛成である。
田代博代議員(右京) 原発事故はすべてのものを奪ってしまう。住居や農業など人の生活よりも経済を優先する政権に愛想をつかしている。すべての原発をただちに停止しなければ、新しいエネルギー源を探して作り出すこともせずに、結局今までのように原発に依存していくことは明らかだ。島津・門両代議員の意見に賛成する。
飯田理事 代議員の先生方の大変力強いご決断に敬意を表したい。皆さまのご賛同を得て、「すべての原発から、ただちに撤退すること」へと変更させていただきたい。
島津代議員 福島県から多くの方が京都に避難してきている。おそらく10年後、20年後も故郷に戻りたくても戻れないという現実が出てくるだろう。しかし、政府は除染すれば問題ないと喧伝している状況。そういった現実がある中で、代議員の先生方から、原発撤退という考えに賛同いただいたことは非常にうれしい。
垣田さち子副理事長 福島からの避難者の問題は医療者として看過できないと考えており、実際に理事者の医院へ受診する事例もあるとのこと。協会でも電話相談に対応したこともあるので、実態把握のための調査を行い、理事会討議を経て、会員へ情報提供を行いたい。また、会員の先生方のところで、そうした事例が発生した場合は、協会へ情報を寄せていただきたい。
旧医師会館解体工事について
島津代議員 現在、旧医師会館は解体工事中で、地元住民説明会において、1階から4階の給湯室にアスベストが使用されていることが判明した。おそらく飛散はないと思うが、長く勤務されている協会職員は健康上問題がないか十分配慮し、問題が生じれば労災で対応されるようお願いしたい。
地域医療への情報提供・問題喚起の強化について
垣田敬治会員(西陣) 医療界全般において、いろいろと大きな問題が山積しており、そのような中で協会をはじめとした団体の理事者各位に頑張ってもらっている。しかしその反面、以前と比較して、地域の中の医師会活動や医師会・協会等の組織からの情報提供が少なくなっている。協会には、地区医師会と連携を密にして、問題喚起や議論を広めるような活動をしていただきたい。来年度はそういった方向性を重視した予算計上がされているのかお聞きしたい。
増田道彦副理事長 地域医療対策費の項目が該当すると思うが、11年度決算においては事務所移転等の問題から全般的に緊縮財政の方針を取っており、執行率が低くなっている状況。しかし、12年度においては、会員への情報提供、あるいは議論の場を設けることに重点を置く方針とし、それを踏まえて地域医療対策においても活発な活動となるよう検討していきたい。
また、そうした趣旨から、現在、会員限定連続講演会も企画検討中である。第1弾ではTPPを取り上げ、賛成・反対両論を確認の上、会員と討論する場となればと期待している(6面参照)。今後も情勢に見合ったテーマを取り上げ、問題喚起の一つの手法としたい。
(文責・編集部)
TPP参加に7割がNO!/総会参加者にアンケート
2010年10月、菅首相(当時)によるTPP(環太平洋連携協定)交渉への参加表明があり、2011年11月には国論が二分される中、野田首相が関係国と協議開始を表明。一部報道によれば、近く正式決定ともいわれており、この状況下で開催された定期総会において、参加者にTPP参加の是非と、医療分野での規制緩和と営利化の進行について意見をきいた。
日本はTPPに参加すべきと思うかについては、思わない68(69.4%)、分からない20(20.4%)、思う9(9.2%)、その他1(1.0%)であった。
「思わない」は7割に止まったが、記載された意見を見ると2割の「分からない」方も、メリット・デメリットが混在して分かりづらいとしつつ医療分野への規制緩和や営利化には反対との意見が多数を占める。その傾向は「思う」方にも同様である。
「思わない」方の意見を見てみると、「日本の医療が崩壊する。ISD条項を国民が理解できていないと思う」「TPPは明治時代の不平等条約に等しいくらいの協定。医療への影響に対する報道が少なく劣化している」「国民の生命に関わることに他国の影響を受けない仕組みと覚悟が必要」など。
「思う」方の意見は、「閉鎖された社会、競争のない社会は進歩、改善がない。国鉄、郵政公社に代表されるように特別扱いはよくない」といった意見がある一方、「分野別に参加を決めるべき」とし「医療分野での規制緩和等は絶対反対」「国民皆保険は絶対守られるべき」など。
医療分野での規制緩和と営利化の進行もNO
医療分野での規制緩和と営利化の進行についての主な自由意見を以下に記す。
本来医療は営利を求めるものではないもの。この分野に営利目的で海外の大企業が参入することで医療の質の低下、崩壊をきたす。
新薬、新技術が保険適用されるようにということなら好ましいが、これを経済的な観点から抑制する一方、保険適用でない技術、薬剤がほとんど規制なく開放されることは不安である。
小泉政権以降、明らかに「医は仁術」から「医は算術」になり果ててしまった。国の方向性として市場原理導入という算術ができあがってしまい、これに現場の心ある医師は反発している。TPP導入はさらにこの考えに拍車をかける。何とか「仁術」に戻せないか。
医療分野はあくまで営利化を阻止すべき領域。金持ちだけが最高の医療を受けられるというのは阻止すべき。
医療が公平であることはありがたいことだが、現在の国民のほとんどは当たり前となり、そう思っていない方が多いのではないか? 我々は仕事をすることそのものがリスクとなっている。医療への評価が低い現在では、それを高めてゆく意味で現在の制度は限界があるのではないか?
我々が自己の研鑽を怠ってはならないが、このような制度も含めて医療の評価(経済的な面だけでない)を高めてゆく必要性があると考えている。
さらなるTPP阻止の取組みも
TPPをはじめとする自由貿易協定は、相手国の市場を自国内と同じように扱うことで単一の市場を作り出すことを目的としているが、その結果、自国の農業や地場産業を保護したり、医療を典型とする非営利の公共サービスが、海外企業にとっての参入障壁となり、保護の見直しや制度の改廃などを余儀なくされるという事態が起こる。
日本ではこういった協定への参加に賛成する立場から、自給率の落ちた農産物などが、海外から安い価格で輸入されるようになり、食糧問題の解決につながる。輸出相手国の障壁がなくなれば、自動車などは競争力が高まり、経済成長が牽引されるといったことがいわれているが、もう一方では、安全性や品質管理などに着目した日本独自の厳しい基準が、非関税障壁として撤廃を求められるのではないかともいわれている。
事実、今年3月に発効した韓米FTAには、そういった企業の参入障壁となる制度を、企業や投資家が提訴、賠償請求し、制度改廃にも追い込みかねない「ISD条項」が盛り込まれている。これは明らかに、国民の生存権、国家主権を侵害する事態である。
韓国ではこれ以外でも、保険適用薬剤の価格決定から政府機関が排除され、製薬メーカーなどの協議で決める仕組みが導入されたり、営利病院の参入を認めざるを得ない、民間医療保険の販売規制ができないなど、同国の医療政策に今後深刻な影響を及ぼすことが懸念される事態が起こっている。
協会は、このような危険な条件が組み込まれた自由貿易協定、とりわけTPPに日本が参加することについては、反対すべきと考え、さまざまな取組みを行っているところである。 (参照)
総会メッセージ一覧
定期総会へのメッセージをありがとうございました。お送りいただいた方は下記の通り(順不同・敬称略)。
民主党・衆議院議員 前原 誠司
民主党・衆議院議員 泉 健太
民主党・衆議院議員 北神 圭朗
民主党・衆議院議員 山井 和則
民主党・衆議院議員 小原 舞
民主党・参議院議員 福山 哲郎
民主党・参議院議員 川合 孝典
自由民主党・衆議院議員 谷垣 禎一
自由民主党・参議院議員 二之湯 智
公明党・衆議院議員 池坊 保子
公明党・衆議院議員 竹内 譲
日本共産党・衆議院議員 穀田 恵二
日本共産党・参議院議員 市田 忠義
日本共産党・参議院議員 井上 哲士
新党きづな・衆議院議員 豊田潤多郎
無所属・衆議院議員 平 智之
民主党京都府議会議員団
民主・都みらい京都市会議員団
公明党京都府議会議員団
公明党京都市会議員団
日本共産党京都府会議員団
日本共産党京都市会議員団
みんなの党・無所属の会京都市会議員団
株式会社京都銀行頭取 秀夫
株式会社損害保険ジャパン
取締役社長 櫻田 謙悟
常務執行役員 関西第二本部長 小林 一也
執行役員京都支店長 末廣 聡
三井住友海上火災保険株式会社
代表取締役 柄澤 康喜
日本生命保険相互会社
代表取締役社長 筒井 義信
保団連をはじめ全国35の協会