第64回定期総会(第181回定時代議員会合併)特集/決議
東日本大震災より142日が経過した。死者・行方不明者合計2万人を超える甚大な被害、特に東北沿岸地域は町全体が根こそぎ破壊される壊滅的打撃を受けた。さらに福島第一原発事故は終息の目途がたっておらず、住民の被ばく、長期避難問題は拡大してきている。まさしく未曾有の大災害であり、国が全力を注いで復旧・復興に当たるべきこの時期に政府・国会・中央省庁(官僚)の動きは遅く、また支援の規模は極めて不十分である。がれき処理、住宅建設、仕事再開、地域医療再建など、財産や生活基盤の一切を奪われた住民の喫緊の切実な最低限の要望に応えきれていない。
この間政府は震災復旧に全力投入が求められていた中で、これを横目に見ながら『税と社会保障一体改革』案作成に奔走し、資料作りに精を出してきた。その裏には消費税増税分を巡る震災復興財源との奪い合いがあった。そうして出された『社会保障・税一体改革成案』は消費税増税のみが具体的で、「強い社会保障」の中身が不明瞭などと与党国会議員ですら反発が強く、閣議決定できていない。
『集中検討会議』で出された厚生労働省の『方向と具体策』では『社会保障は、「自助」を基本とし、保険形式の「共助」が補完する、これで対応できない困窮者に一定の要件下に社会福祉などを「公助」として行う』という規定で、これまで憲法25条で保障されてきた国民の権利としての社会保障の根本理念をないがしろにしている。すでに同会議では、将来の医療・介護の提供体制の青写真も作成しており、高度・急性期医療に集中投資し、他方「重点化・効率化」では在宅医療・介護にシフトすることによる金額抑制まで試算されている。次回・次々回診療報酬改定はすでに大枠が決められている。
私たち保険医は、今こそ国民皆保険制度を守り、安全で安心な医療・介護が提供できる国民本位の医療制度・社会保障制度の確立と充実を願うものである。その実現を目指し「社会保障基本法」の制定運動を進めていく。その要求を軸に以下の通り決議する。
一、震災被災者の一刻も早い生活再建と、住民合意の復興策を国の責任で行うこと。
一、被災地の医療・介護の復旧・復興に公的な政策・資金面での支援を行うこと。
一、原発事故被災者の避難・健康管理に長期で最大限の支援を行うとともに、原発に依存した国のエネルギー政策を根本的に転換する議論を進めること。
一、憲法25条の理念を具体化する社会保障基本法を制定し、国民本位の医療・介護・年金・福祉制度を確立すること。そのための財政措置を施すこと。
一、保険で安全・安心な医療が提供できる診療報酬体系を確立するため、医療介護費の総枠拡大を図ること。また患者の一部負担金軽減を図ること。
一、医学的根拠に基づいたレセプト審査と公正な指導・監査体制を確立すること。医療における主治医の主体性と人権を尊重すること。
一、消費税増税を中止し、医療への消費税ゼロ税率を適用すること。
一、社会保障財源は応能負担原則に基づき、所得再配分機能を活かして確保すること。
2011年7月31日
京都府保険医協会 第64回定期総会(第181回定時代議員会合併)