第4回開業医フォーラム開く
新専門医制度下で専門科の開業どうなる
「単科専門科開業医と新専門医制度」をテーマに協会は第4回開業医フォーラムを11月29日に開催した。垣田理事長の司会で、渡邉副理事長から新専門医制度下で予想される専門科の開業形態について基調報告を行った後、3領域からゲストを迎え、質問に答えてもらうかたちで意見交換した。
大病院集約化の懸念は一致
日本耳鼻咽喉科学会理事長の久育男氏は、日本専門医機構(以下、機構)について、学会を社員として迎えた時点で第三者として認定するという高邁な思想が消えたのではと評した。多額の借金のため、本来の仕組みの議論よりも金策に傾注せざるをえない機構の内情について私見を述べた。
また、機構の目指す「自律」とは裏腹に国が医師を統制下に置く仕組みとして使われるのではないかという懸念に対しては、専門医制度を第三者機構でつくることは当然のことで、国に思惑があるかどうかは承知していないとした。
総合診療専門医と他領域とのすみ分けについての質問には、医師法第17条にかかれているのは、医師は医業をするということのみ。総合診療専門医と他領域との分かち合いは難しく、保険診療で患者を誘導していくしかないとした。
資格維持のための大病院集約化と症例数の少ない地域での診療維持の困難化についての質問には、耳鼻咽喉科でプログラムが出てきているのは92施設。大学とその分院等を除くと一般病院では6施設のみ。地方の大学は指導医が圧倒的に少なく、指導医の数で定員が決まるので、大きな問題になるだろう。耳鼻咽喉科に限っては地方で医師が少なくなっていくのは明らかだとした。
更新要件については、必修となる専門医共通講習のうち医療倫理の講師もなかなか見つけられず、問題になるだろう。耳鼻咽喉科における診療実績の証明は、5年間で200症例の報告だから日常診療を続ければ十分クリアできるとした。
緊急対応に不安の声
京都小児科医会理事の長谷川功氏と京都産婦人科医会副会長の種田征四郎氏には、それぞれの専門科と今後初期診療を担うとされる総合診療専門医との関係についてきいた。
種田氏は、正常分娩は総合診療専門医にと言われているが、正常分娩は結果論。常に異常分娩の可能性をはらんでいるもので、産婦人科専門医の研修なくして対応できるとは思えない。正常な経過を期待していたにもかかわらず、突如緊急対応が迫られるということを理解してほしいと話した。
長谷川氏は、開業医の小児科を受診する児の多くは感冒様症状を主訴としており、その中に紛れている重症疾患を発見して、より高次の病院へ送っている。これを総合診療専門医が行って重症疾患の患者を小児科開業医に送ってこられても、結局高次病院へ送らざるをえない。これでは、小児科開業医はいったい何をすればいいのかと懸念を示した。また、小児科学会の理事長が小児科医は子どもの総合医だと声明を出しており、一方で小児科医会が「地域総合小児医療認定医」を作り始めていることを紹介した。
専門科開業医の行く末案じる声が多数
参加者からは次のような意見があった。
「ファーストコンタクトを総合診療専門医にしようとすれば、診療報酬で差別化を図るしかない。そうなれば患者の窓口負担も増えることになり、一次診療を行えないことで患者数が減り、窓口負担でも受診控えが起こることが予想される。単科専門科医院を継続できるかどうかが不安」
「眼科疾患であっても小児であれば、まずは小児科にかかる。今後、総合診療専門医が初期対応することになれば、適切な処置ができずに重篤になってから専門科に来ることも危惧される。一次診療から外され、送られてくる患者を高次病院へ送るだけになれば、なぜ開業医をしているのかと考えてしまう。日々の診療の中で、初めての症例や珍しい症例に遭遇することもある。こうした診療と一体となった臨床研究も、眼科医としてのモチベーションに深く関わっている」
「厚労省は保健医療2035で、かかりつけ医の考え方などを出している。国が今、機構と関わらず引いているとしたら、いずれおそらく乗っ取るかたちで入ってきて、新専門医の枠組みを利用した受診の道筋のつけ方などがいきなり出てくるのではないか」
診療報酬での差別化による専門科開業医の経営を懸念する意見について、久氏はこの件について開業医と話をしたことがなかったので、そのような考え方については初めて聞いたと明かした。その上で、機構は専門医資格をとってほしいというのが原則であり、とった限りはインセンティブをつけてほしいと考えている。むしろ高い金額を払ってでもかかりたいと思われる医療機関を目指してほしいとした。
また、2020年以降は新たに認定された専門医の資格に標榜が限定されるのではないかという質問に、久氏は「可能性は高いのではないか」とした。