第190回 定時代議員会 決議  PDF

第190回 定時代議員会  決議

 安倍政権は、社会保障費の伸びを今後3年間で1・5兆円に抑える方針を打ち出し、診療報酬マイナス改定を迫った。「病院の赤字 拡大、診療所 利益安定」という開業医に対する誤った喧伝がされる中、協会はマイナス改定を行わないことなどを求める会員署名を携えて厚生労働省に直接交渉を行ってきた。その結果、改定率は本体プラス0・49%、薬価・材料価格マイナス1・33%、ネットでマイナス0・84%と発表された(「制度改定分」を加えればマイナス1・43%)。社会保障費抑制の大部分が医療に押しつけられたことや、総体として引き下げという問題はあるものの、本体においてわずかであってもプラスとなったのは、会員署名をはじめとする私たちの運動の成果である。

 格差の拡大と貧困の進行に増税が追い打ちをかけ、患者の置かれている情況も厳しさを増している。経済的な理由による受療行動の萎縮に追い打ちをかけるような、70歳以上の高額療養費上限額引き上げや75歳以上の窓口負担2割化、受診時定額負担の導入、市販品類似薬の保険外しなどさらなる患者負担拡大の提起もされ、不安が広がっている。

 この医療機関の経営と地域医療の危機の中で提供体制改革が進められている。病床機能分化による平均在院日数短縮と早期退院、在宅復帰、その受け皿としての在宅医療充実と地域包括ケアシステム構築がそれであるが、さらに患者さんの苦難が拡大しかねず、病院も開業医も将来を展望できなくなっている。

 一方、安倍政権は、構造改革政治の仕上げに着手し、成長戦略とその市場確保を目指す軍事大国化に向けて突き進もうとしている。TPP(環太平洋連携協定)や原発の再稼働・輸出が進められ、また集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法の成立が強行された。その視野には改憲勢力を結集しての憲法改正も捉えられている。もはや格差と貧困の克服や国民の暮らしに根ざした政治は置き去りにされている。

 今年は参議院選挙の年である。医療を守り、国民と医療者の暮らしを守るためにはどういう政策選択をすべきなのかを問わなければならない。その働きかけの先頭に立つ決意のもとに以下を決議する。

 一、憲法25条の理念を具体化する社会保障基本法を制定し、国民本位の医療・介護・年金・福祉制度を確立すること。

 一、公的医療保険で良い医療が提供できる診療報酬を保障すること。

 一、受診手控えを深刻化させる患者負担増を行わないこと。

 一、萎縮診療をもたらし患者の「療養の給付」の制限につながる集団的個別指導を廃止し、高点数を選定理由とした個別指導は行わないこと。

 一、国の医療保障責務を放棄するような構想「保健医療2035」を具体化しないこと。

 一、消費税の10%増税を中止し、医療機関における消費税損税を解消するゼロ税率等手立てを講ずること。

 一、医療の公共性と安全性を崩壊させるTPPの批准を行わず撤退すること。

 一、命と健康の最大の敵、戦争へと向かう可能性のある「平和安全保障関連法」を発動するな。

 一、原発再稼働・原発輸出等を直ちに止め、原発依存のエネルギー政策を転換すること。

 一、地球温暖化対策の新たな枠組みであるパリ協定とCOP決定を誠実に実行すること。

2016年1月28日

京都府保険医協会

第190回定時代議員会

 

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