第182回定時代議員会/決議
未曾有の大災害である東日本大震災から、およそ1年が経過しようとしている。復旧・復興は遅々として進まず、福島第一原発事故についても深刻な事態が続いている。
このような状況の下、政府は「社会保障と税の一体改革」をすすめている。「社会保障と税の一体改革」は医療、介護をはじめとした社会保障各分野における効率化・機能分化をすすめると同時に、法人税や所得税など社会保障のために使っていた財源を、財政再建の名の下に、消費税に置き換えようとしている。消費税の社会保障目的税化は、社会保障財源の拡大につながる保証はなく、むしろ消費税以外の財源を社会保障に投入しないことによって社会保障全体の財政が抑制されることは明白である。また、受診時定額負担の導入をはじめ、さらなる患者負担増案が企図されたが、今後も断じて認めるべきではない。「社会保障と税の一体改革」の撤回を強く求める。
診療報酬改定に関しては、国民が保険で受けられる医療の質や範囲を決める日本の医療制度の根幹の事柄であり、2012年改定は、全ての医療機関において実質的マイナス改定を絶対に回避するよう求める。
政府はTPP(環太平洋連携協定)交渉への参加を表明した。医療分野において我が国が世界に冠たる公的医療保険制度を築きあげられたのは、医療の公益性と安全確保を重視する医療者及び国民の意識が基盤にあり、政府は輸入・参入規制をしてきたからである。TPPは、こうした規制を「貿易障壁」として撤廃を求めたものであり、日本の医療の公益性と安全性を脅かすものである。京都府保険医協会は、医療者として、引き続き公的医療保険制度を守りぬくため全力をあげるとともに、私たちの不安を無視してTPP参加交渉を進めようとしている政府の動きに対し、強く抗議し、交渉からの撤退を求める。
私たち保険医は、今こそ国民皆保険制度を守り、安全で安心な医療・介護が提供できる国民本位の医療制度・社会保障制度の確立と充実を願うものである。その実現を目指し「社会保障基本法」の制定運動を進めていく。その要求を軸に以下の通り決議する。
一、震災被災者の生活再建と、住民合意の復興策を国の責任で行うこと。
一、原発事故に対する長期で最大限の対策を国に求めるとともに、原発に依存した国のエネルギー政策を根本的に転換すること。
一、『社会保障と税の一体改革』を撤回すること。今後、患者のさらなる負担増を行わないこと。
一、消費税を増税しないこと。消費税の社会保障目的税化を行わないこと。医療への消費税ゼロ税率を適用すること。
一、公的医療保険で安心・安全な医療が提供できる診療報酬体系を確立すること。2012年度診療報酬は全ての医療機関において断じて実質的マイナス改定としないこと。
一、医療の公共性と安全性を崩壊させるTPPの参加を止めること。
一、憲法25条の理念を具体化する社会保障基本法を制定し、国民本位の医療・介護・年金・福祉制度を確立すること。そのための財政措置を施すこと。
2012年1月26日
京都府保険医協会