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第182回定時代議員会質疑応答の要旨

 京都府保険医協会は1月26日に第182回定時代議員会を開催(前号既報)。本号ではその質疑応答の要旨を掲載する。(文責:編集部)

■京都市長選挙

 門祐輔代議員(左京) 協会が取り組んでいる地域包括ケアや国保の問題は、誰が首長になるかで大きな影響を受ける。2月5日に京都市長選挙が行われるが、理事会においてどの程度議論されており、またその内容をどのように会員に周知しようとしているのか聞かせてほしい。

 垣田さち子副理事長 協会は選挙において特定候補の支持をしないという方針を従来から堅持しており、保険医新聞等で情報提供を行い(1月20日の保険医新聞で両候補のマニフェストを紹介)、選択は会員の先生方の見識に委ねることにしている。今回の選挙では、現職候補より民主党府連を通じて推薦依頼があり、理事会で従来方針を確認した。

 理事会では、それぞれの課題について自治体へ要望を行うにあたって、しっかり議論を行っている。京都市長選のマニフェストを比較してみると、両候補とも協会の主張を意識して書かれているかのような、よくできた内容になっている。後はこれをどう具体化させるかだ。

■原発問題

 島津恒敏代議員(中京西部) アメリカ科学アカデミー紀要電子版には、原発事故により京都を含め日本全国にセシウムが降り注いでいるという実態が詳細に報告されている。しかし、日本政府の対応は原発を直ちに廃止するのではなく、40年間は据え置くと表明しており、とんでもない居直りであり後退だ。

 もし、どこかで再び原発事故が起こったら、どうなるか。そういう状況であるということを、我々保険医はもっと認識する必要があり、本日の報告でほとんど触れられていないことは遺憾だ。原発問題は緊急の課題としてきちんと押さえる必要がある。

 飯田哲夫理事 我々を取り巻く問題が非常に多岐であるため、原発に関する部分が少ないと感じられたのだと思うが、問題の重要性は認識している。協会の現在の基本方針は、全ての原発を直ちに廃止すべしである。しかし、問題はあるけれども必要だという意見が未だ多く、推進派の巻き返しでいろんなキャンペーンが展開されている。その狙いと問題を見抜いてしっかり反対していかなくてはならない。特に医療担当者として、被曝の問題は重要だ。原発は事故がなくても日常的に被曝を起こさざるを得ない発電システムであり、これを認めるわけにはいかない。また、事故の汚染実態の情報公開をきちっとさせて、長期の対策を求めていかねばならない。その方策については会員の方々の意見もいただきながら具体化したい。

■新型インフル法案

 島津代議員 新型インフルエンザに関して、流行を食い止めるという理由で、「集会」の自由を制限する等の内容を含んだ法案が国会に提出されようとしている。誠に由々しき問題である。もし、このようなことが認められれば、民主的な諸権利の侵害にあたるのではないか。

 垣田副理事長 ご指摘の通り、緊急事態宣言をして私権を制限することや医療関係者に医療従事を指示し、それに従わなかった場合の罰則を設けることも検討されており、問題の多い法案だと認識している。法的な問題も含めて発言等していきたい。(1月31日にパブリックコメントを提出)

■社会保障の財源

 門代議員 「社会保障と税の一体改革」について、協会の指摘は基本的には賛成である。協会が関わった書籍『新たな福祉国家を展望する』を読んで感じることは、財源問題にあまり踏み込んでいないということだ。もう少し踏み込んで記述しないと、説得力に欠けるのではないだろうか。累進課税の強化等、具体的な主張をして世論に問いかけていくことが必要ではないだろうか。財源問題に関して、福祉国家構想研究会での議論の進捗状況等で協会が把握している情報等があれば、教えてほしい。

 島津代議員 全世界において、1%の人間が富の7割を所有する状況で、社会保障の充実を唱えてもむなしい感じがする。世の中が転換して、現在の社会的な構造が変わらなければ、矛盾は解決しないだろう。日本においても財政危機の中、銀行には公的資金が注入され救済される一方で、庶民は国に吸い上げられるばかりだ。そういう状況で良い解決策は見当たらないのではないだろうか。

 垣田副理事長 財源がないから社会保障の抑制は仕方ないという議論が席巻しているが、そんなにお金をかけなくても現に日本の医療は世界一といわれる結果を出している。これを潰さないだけでも大変な価値がある。私たち開業医が日本の医療を支えてきたことを、これでいいのだということも含めて、もっと患者さんに訴えていくことが大事なのではないかと思う。

 島津代議員の指摘されるような事態の招来を見込んでの主張が一体改革の理由づけにされている。だからこそ、今、どういう社会をつくって、どんな政治を求めるのかということを訴えていかねばならない。その意味で門代議員が指摘された、社会保障基本法の本がじわじわと読まれて全国から反響が出ていることに京都協会としては元気づけられている。

 関浩理事長 財源問題については、政府関連の委員も含めて世に多くの経済学者、研究者がいるが、そうした“専門家”がこれほど議論しても出てくる案はこの程度かという感がある。基本的には、国の特別会計の無駄切り崩し、その下に連なる公益法人等へ大鉈を振るうことを考えないといけない。また税の公平性の問題からいえば、公的資金が投入された銀行がほとんど法人税を払っていない問題。一向に具体化しない宗教法人への課税、261兆円といわれる企業の内部留保など、個別の課題は見えている。それをどんな形にまとめればいいか、研究者の方たちと議論していきたいと思っている。

■その他

 緒方伸好代議員(西京) 日本人研究者のインフルエンザに関する論文に、米国政府がテロ防止を理由に論文修正を要求したと報道があった。テロ対策を名目に言論の自由を制限するような行動は納得できない。米国のすべきことは、自らがテロの対象とならないような国際的に立派な行動をとることだ。

 関理事長 その報道は今朝、衛星テレビニュースで知ったばかりで詳細は承知していないが、米国の言いなりに世界が動かされるようなことはあってはならないし、言論統制ももってのほかだ。その日本人研究者が圧力に抗して論文を発表したことは痛快な話と感じている。

 田代博代議員(右京) 大阪で、府知事・市長同時選挙が行われ、大阪維新の会が勝利し、厳しい罰則規定を盛り込んだ条例等が検討されるなど懸念すべき状態だ。保険医協会にどうこうということではないが、気をつけなければならない。

 議長 現在の一部の社会風潮に対する厳しい警告の発言と受けとめたい。

第182回定時代議員会での質疑応答のもよう

代議員会での質疑のもよう

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