第40回産婦人科診療内容向上会開く

第40回産婦人科診療内容向上会開く

子宮頸部癌を取り巻く最新事情を紹介

 第40回産婦人科診療内容向上会が5月17日、京都府医師会館で開かれ、100人が参加した。森治彦産婦人科医会会長、関浩協会理事長の挨拶に続き、産婦人科医会理事、京都府社会保険診療報酬支払基金審査委員の山下元氏による「新点数の留意事項と最近の審査事情」の解説が行われた。さらに国立病院機構京都医療センター婦人科医長の井上卓也氏が「子宮頸部初期病変 最近の話題―Liquid Base Cytology (LBC)とHPVワクチンを中心に―」を講演した。

産婦人科診療内容向上会のもよう
産婦人科診療内容向上会のもよう

講演の内容

 今回の講演では、子宮頸部癌を取り巻く最新事情を紹介した。

 子宮頸部癌の発癌に対するヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が明らかにされ、欧米を中心に子宮頸部細胞診の分野でもさまざまの新しい概念や技術が生まれ、日常診療に利用されてきている。

 今回はこの中で、ベセスダシステム2001、液状処理細胞診(Liquid base cytology、LBC)、HPVワクチンについて、その現状や意義を紹介した。

 ベセスダシステムは全米で用いられている子宮頸部細胞診報告様式で、標本の適、不適を評価すること、推定病変を記述的に記載すること、診断困難な異型細胞に対して新しいクライテリアを設けることなど、診断の精度管理を重要視していることが特徴である。

 LBCは、採取された細胞を固定液に浮遊させ、標本自動作成装置を用いてスライドグラスに細胞を均一に塗抹し、細胞診の判定を行う方法。この方法には、細胞を浮遊させてから標本を作製するため細胞の代表性を網羅する標本の作製が可能、細胞の重層化による偽陰性がない、液状保存のため同日または後日に複数枚の標本を作成することができる、HPVウイルス検査など分子生物学的検査にも利用可能、診断の効率化が図れるなどのメリットがある。

 発癌性HPVと子宮頸癌との関連性はほぼすべての子宮頸癌症例において見られ、子宮頸癌の発癌に関してHPVが何らかの役割を果たすことはほぼ確実とされている。このような知見の集積から、HPVワクチンの開発が進められ、現在は欧米諸国を中心に臨床応用が開始されるに至っている。我が国でも06年より臨床試験が開始されており、今後、我が国の臨床試験のデータも含め認可について検討される予定である。

 近年、子宮頸癌の検診や予防の分野について、多くの技術や薬剤が開発されつつある。これらをうまく組み合わせることにより、現在よりもさらに効果的な子宮頸癌の早期発見や予防についての体制を構築できると思われる。

 我が国でも徐々にではあるが、今回紹介したベセスダシステム2001やLBCなど新しい知見に基づいた手法も取り入れられつつあり、また、HPVワクチンについても近いうちに認可される可能性が高い。これらを導入するにはコスト面などまだまだ解決しなければならない問題点があるが、今後子宮頸癌の予防と早期発見における効果的な体制が構築されることが望まれる。

【京都保険医新聞第2648号_2008年7月21日_2面】

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