第二の医療崩壊招く 本体引き下げ断固反対
会員要請署名で厚労省直接交渉
京都府保険医協会は11月17日、塩崎厚生労働大臣に対して、次回診療報酬改定に関する要請署名264筆、入院時食事療養費等の改善を求める要請署名159筆、リハビリテーション点数に関する共同要望書 の三つを提出した。提出にあたり、協会から鈴木卓副理事長と事務局が厚生労働省に赴き、担当者に直接手渡すとともに、懇談して改善を訴えた。厚生労働省からは保険局医療課の田村課長補佐が対応した。
基本診療料は引き上げを
診療報酬本体のマイナス改定を行わないこと、薬価・医療材料の引き下げ分は本体に補填することについて、厚労省は「医療経済実態調査結果を受け、年末に向けて担当大臣間での議論となるので、現時点では分からない」と回答した。協会としては「薬価・材料価格は中医協で決定しており、この引き下げによる財源は本体に回すべきだ。首相、財務相にも訴えていくが、頑張ってほしい」と要請した。
次に、初・再診料、外来管理加算など、基本診療料を引き上げることについて、厚労省は「基本診療料の引き上げはかなりハードルが高いだろう。前回改定を踏まえれば、地域包括診療加算を改善していく方向の議論となるのではないか」と回答した。協会からは最終盤で引き下げる等の議論にならないようにと要請した。
三つ目に、問診と診療、諸検査から得られた情報から、総合的に診断する技術など、内科系技術評価の充実を求めた。これについて、厚労省は「これらの検討は近年始められたものであり、評価の方法が難しいと感じている。基本診療料との区分の問題もある」と回答した。
四つ目に、対象疾患が異なる場合であっても複数医療機関で算定不可とされている在宅自己注射指導管理料の改善は、厚労省は「さまざまなご意見を頂戴しており、支払側からも意見が出されている。おそらく中医協で議論することになる」と回答した。
その他、退院後1カ月以内の特定疾患療養管理料の算定制限の廃止、同一建物居住者の訪問診療料、在医総管等の改善も、改めて訴えた。
食事療養費等の引き上げを要請
入院時の食事代の負担額の引き上げ実施の延期と、入院時食事療養費・生活療養費の引き上げを要請した。厚労省は「食事療養費・生活療養費は基本料相当の扱いであり、抜本的な改定時でないとなかなか検討が難しい。一方、栄養管理に対する評価が未整備であるとの認識はあり、改善していきたいと考えている」と回答した。
加えて、食事負担額の引き上げについて、協会から「実施されると食事療養を断る患者が出かねない。患者の実態を考慮した慎重な対応を」と、再度改善を求めた。
その他、入院料の施設基準で求められている管理栄養士の常勤配置について、人材不足から確保が困難に陥っている病院がある実態を報告して、取り扱いの緩和を求めた。
改めて外来維持期リハ必要と訴え
要望書は京都府の理学療法士会、作業療法士会、言語聴覚士会と協会の4団体共同でまとめたもの。
(1)要介護者の外来維持期リハビリの算定打ち切りを中止または延期すること(2)必要に応じてリハビリできる報酬体系に改めること(3)摂食機能療法の対象疾患を限定しないこと(4)急性期・回復期リハビリ後の継続したリハビリを保障すること(5)地域包括ケア病棟におけるリハビリは出来高で算定できるようにすること—の5点の改善を求めた。
厚労省は「次回改定における着眼点はご指摘の通りだが、今後の検討となる。現場からもしっかり実施しているところと、そうでないところを同一に評価してほしくないとの意見をいただいている」と述べた。協会は、特に(1)の問題について、前回改定時、中医協の結果検証部会の報告により、外来維持期リハが必要な患者が存在することが明らかとなり、延期された経緯があり、現場の実態から今回も同様の結果となるはずなので、少なくとも延期してほしい旨を訴えた。
MEDIFAXが報道
その他協会は、障害者施設等入院基本料算定病棟における意識障害の患者の取り扱いについて、地域医療に影響する改定は慎重に検討すること、入院中の患者の他医療機関受診の取り扱いについて改善すること等を求めた。
提出した要請署名は、11月26日付で内閣総理大臣、財務大臣、中医協会長、および全委員、京都選出国会議員らにも提出。11月18日付「MEDIFAX」で報道された。