私の宝物 PPMのメロディー、漱石とともにあった青春時代
遠藤 裕(北)
団塊世代の高校生時代は、アメリカンフォーク全盛でした。私も中学3年に転校したこともあり、ラジオから流れるPPMの「500マイルも離れて」という曲に聴き入っていました。7、8年前でしょうか。TV番組で彼らの昔のコンサートが放映され、初めてこのグループの歌っている姿を見ることができました。清楚な服装の、若い、美しいマリーさんを見ることができ大変感動し、そして、コンサート終了前に、彼女が歌ったある1曲に魅了されました。「There is a ship」という曲です。しかし、それから数年も経たない内に、彼女の訃報に接し非常に落胆しました。
さて、4月より朝ドラ「花子とアン」が始まっています。赤毛のアンを初めて邦訳した女性の話ということと、子役の花子の目の輝きに引き込まれて毎回見ています。花子が英語の授業についていけず、夜間、父に励まされる場面がありました。その時、スコット先生の、故郷の恋人を思う歌声が流れてきました。久しぶりに聴く、懐かしい「There is a ship」のメロディでした。
話は変わりますが、私は高校入学後、大の漱石ファンで、書棚の漱石全集の小説を、何とか読破しました。『吾輩は猫である』を最初に読んだ記憶があります。猫が主人公で、人間世界を上から目線で見ているところが、大変面白かったです。『草枕』の冒頭の文章も非常にユニークだと思いました。しかし、彼が新聞小説を書くようになってからの作品は、人の心の内面を描き、幾分暗い内容のものが多いように思い、その後は全く読まなくなりました。
ところで、A新聞が、今年は『こころ』連載後100年とのことで、『こころ』を昔と同じ形で連載すると報じました。4月20日が第1回目でしたが、あっという間に読み終えました。その時、若い頃の思い出が脳裏を過ぎるとともに、書棚の全集に申し訳ない気持ちになりました。
最近の二つの出来事により、マリーさんの歌声と漱石の小説の世界が、私の青春時代の心の宝物だったことに気付かされたしだいです。