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私のすすめるBOOK

「滅私奉公」から「活私創公」へ健康で働き続けるために

仕事と生活習慣病(経営者新書)
吉中丈志著、幻冬舎
価格777円(税込)

 著者の吉中丈志氏は京都民医連中央病院院長で、循環器専門医、総合内科専門医であるとともに多くの労災認定にも関わってきた経歴があり、今年から保険医協会の政策担当理事としても活躍されている。

 豊富な産業医としての経験と知識をまとめたのが本書である。生活習慣病といわれる肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、心臓病、脳卒中等は、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症・進行に関与するとされているが、1日のうち3分の1以上を仕事に費やしている私たちは、仕事と健康の関係をもっと真剣に考えるべきというのが本書のテーマである。

 著者が関わった京都府内「レーヨン工場で起きた慢性二硫化炭素中毒」労災認定の事例では、企業の利益追求のために、労働者の生命と健康が踏みにじられることを経験。そんな企業との出会いから、仕事と病気についてずいぶん勉強されたようである。労災といえば仕事中のケガ、腰痛、アレルギー性皮膚疾患、塵肺、アスベストによる中皮腫、有機溶剤による胆管がんなどを思い浮かべるが、最近では、過重負荷による脳・心臓疾患(いわゆる過労死)、心理的負荷によるうつなどのメンタルヘルスの問題が増えている。医師や看護師など、夜間勤務を含む長時間労働による過労やストレスも問題であるが、教職員のメンタルヘルス対策も大変で精神疾患による病気休職者が急増している。

 日本では年間の自殺者が3万人を超えるといわれ、心の病の予防とケアが重要視されている。非正規雇用者の劣悪な労働条件も問題である。ひと世代前の「滅私奉公」から脱して、これからの働き方として、「ワーク・ライフ・バランス」を見直し、自分を活かし、社会のために働く「活私創公」で働くことで、健康になる社会をめざそうと提案している。

 この本は経営者新書となっているが、経営者や管理職の人たちはもちろん、医療や労災等に関わる人、忙しく働いている一般の人にも必読の書である。(宇治久世・増田道彦)

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