私のすすめるBOOK/『誰でも安心できる医療保障へ―皆保険50年目の岐路』  PDF

私のすすめるBOOK/『誰でも安心できる医療保障へ―皆保険50年目の岐路』

これからの「医療」の話をしよう

 65歳以上の高齢者数23%超え、生活保護者数208万人超え、非正規労働者率35%超え、国の借金800兆円超え…。絶望的に見える現状を変えてくれるのが、2009年総選挙の民主党マニフェストのはずだった。しかしその民主党(中心の)政権が新自由主義=市場原理主義に回帰してしまい、これから医療・介護制度はどうなるのだろうか?

「在宅を中心に地域包括ケアだ」「消費税増税やむなし」「いや、ムダを削るのが先だ」「若者の雇用を何とかしなければ誰が支えるのだ」…、延々と議論は続く。

 本書は「福祉国家構想研究会」がめざす「新しい福祉国家」のうち、医療を中心とした社会保障の対案を提示したものである。

 医療保障の基本的考え方、民主党政権の医療政策、国保・後期高齢者医療制度の問題点などを踏まえて本書では、福祉国家型医療保障制度の原則として、1. 全国民対象の統一保険制度、2. 財政責任は国がもつ、3. 給付管理は基礎自治体が行う、4. 利用にともなう一部負担金(窓口負担)制度を廃止する、5. 保険料は、所得に対して累進的に比例する方法で計算し、かつ最低生活費にくいこまない水準にする(医療保険税→社会保険税→社会保障税と企業も応能負担する)、6. 全国統一の現物給付とする、7. 医療提供体制は、全国医療整備計画により整備する―の7点をあげている。

 絵空事?そう思う向きにも是非読んでほしい。社会保障はいつの間に、「人権」から「自助」「互助」「共助」「公助」になったのか?必要充足の原則、現物給付の原則、収支相等の原則、給付・反対給付均等の原則、保険技術的公平の原則…、普段見慣れない言葉を理解しながら、今後の医療保障を考える共通認識をつくりたい。

 本書は社会保障全般のあり方を示した『新たな福祉国家を展望する』(旬報社)の各論でもあり、併読をお薦めしたい。
(左京・門 祐輔)

『誰でも安心できる医療保障へ―皆保険50年目の岐路』 二宮厚美、福祉国家構想研究会編、大月書店、定価1,995円(2011年12月16日刊)
『誰でも安心できる医療保障へ―皆保険50年目の岐路』
二宮厚美、福祉国家構想研究会編、大月書店、定価1,995円(2011年12月16日刊)

「私のすすめる…」本・映画・音楽等、新旧ジャンルを問わず、心に残った作品紹介をご投稿下さい。また、「こだわりの待合室」も募集します。800字以内。掲載後、記念品を贈呈します。

ページの先頭へ