福島原発事故に関する緊急声明
東日本大震災で亡くなられた方々、生活の基盤を失われた方々に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
今回の福島原発事故は、原子力=核の平和利用と呼ばれる原発の危険性を、いや原発だけでなく使用済み核燃料を含むすべての核とその利用の持つ危険性を、日本のみならず世界にあらためて明らかにした。
放射性物質には、放射能の半減期が人の生涯と比べれば無限とも思える時間を要するものも存在するが、我々は核の放射能が自然に減弱するのを待つほか、放射能を本質的に減弱させるすべを持たない。そして放射性物質から出た放射線の人体へ与える障害に量的閾値はない。一方ある値を超えた被曝から人を救う手だても我々は持たない。その放射性物質が、人の住む環境に高濃度に排出され、広範に広がり、なお未だそれが制御出来ず、可能だとしてもその一応の収束には少なくとも10年以上かかるのが福島原発事故である。核の利用が人の行うものであり、人知が無限でない限り、再び「想定外の事態」が発生しないという保障、惨事が起こらないという保障はない。そしてまた医療に携わるものとして、大小の事故ばかりではなく、平常運転時ですら放射線障害を完全には避け得ない、人の健康を障害することが現実には前提になってしまっている電力に依存する社会からの脱却を願い、国、原発・原子力関連施設のある、あるいはそれに隣接する都道府県知事、経済産業省、原子力安全保安院、原子力安全委員会、電気事業連合会、電力会社、電機連合をはじめとした電力関係団体各位に以下を要望する。
「情報提供」
1、事故情報は、必要な情報収集に最大限の努力をし、それを全て、速やかに公開すること―正確で充分な情報が市民の不安を軽減する。
2、特に放射能汚染の状況と、それのもたらす人体への影響を正確に知るための測定などを充分に行い公開すること―医療行為における放射線量との比較や、内部被曝と外部被曝を混同させるような解説など(特に本来そのようなことを監視すべきマスコミまでがそのまま報道することを含め)、いたずらに安全を言い募るべきではない。
3、さらなる被曝を防ぐため、必要充分な退避の情報提供と実施。水、農作物、畜産物、水産物などの正しい汚染情報の公開と対策の実施。
4、計画停電やむなしとしても、そのことをもってして原発の必要性などを喧伝してはならない。
「被曝対策」
1、被曝、及び被曝の可能性のある人々へ早期に、充分な対策を講じること。
「生活支援」
1、避難地域に生活基盤を持つ人々、自身の危険を顧みず現場で事故処理に携わる人々、そのほかのすべての被曝した人々の今後の医療と生活の保障を行うこと。
「安全のための組織」
1、原発推進を基本とする経済産業省にある原子力安全保安院、および原子力安全委員会を廃止し、独立した公平で透明性と権限が保障され真の安全を担保できる(脱原発をも進言しうる)機構を設立すること。
「脱原発に向けて」
なによりも電力の原子力依存から脱却し、再生可能エネルギーの開発に全力を尽くすと同時に、省エネルギーとエネルギー利用の改善に尽力すること―それでもなおその選択と実行に時間がかかるというのであれば、少なくともそれまでに下記は実行すべきである。
1、原発と関連原子力施設の新設を行わない(工事中のものは中止)。
2、地震の恐れの大きい場所にある原発、老朽化した原発の運転中止と対策。
3、六カ所再処理工場の運転停止。
4、高速増殖炉計画の中止。
2011年4月12日
京都府保険医協会
第20回定例理事会