社保研レポート 第648回 最近の糖尿病診療と保険上の留意点  PDF

社保研レポート 第648回

第648回 最近の糖尿病診療と保険上の留意点
講師:和田内科医院院長、京都糖尿病医会会長、京都府国民健康保険団体連合会審査委員 和田  成雄 氏

DPP4阻害薬の登場で大きく変貌 実地医家での糖尿病診療体制を

 糖尿病は、日常診療において遭遇する機会が増えただけでなく、あらゆる領域の疾患群に少なからず関与していることはいうまでもない。今回の社会保険研究会では、京都糖尿病医会会長として指導的立場で活躍される和田成雄氏が、実地医家の視点で最近の糖尿病診療、保険上の留意点について概説した。

 全国には糖尿病の可能性が否定できない人を含めると2310万人(2007年)に達するが、 60〜79歳で約60%を占め、糖尿病によって余命は10年ほど短くなるという。超高齢化社会を迎える我が国の近未来を思うと、看過できない数字である。治療の目標は、合併症の発症、進展の阻止により“健常な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、寿命の確保”にある。それには血糖のみならず血圧、脂質、禁煙などの集約的な管理が必要であり、また食後血糖の是正と食前低血糖の防止という“良質な血糖コントロール”を目指すことが肝要である。 この点、日内変動を評価できるCGM(持続血糖モニタリング)が普及すれば、有用なツールになりえるであろう。経口血糖降下剤は、従来HbA1c6・5%(JDS)以下でグリニド、αGI製剤、6・5%以上でSU剤が第一選択であったが、今回力点を置いて解説されたDPP4阻害薬の登場で、糖尿病治療は大きく変貌している。すなわちGLP1の作用による、血糖値に依存したインスリン分泌促進やグルカゴン分泌抑制をはじめ、胃蠕動運動抑制、インスリン感受性改善が、血糖コントロールに優れた効果をもたらす。さらに膵外作用として、心血管イベントの抑制、腎保護効果の成績など多面的な効果が報告されている。自院の症例解析では、 SU剤との相性がよく肥満者にも有効例は見られた。また、不十分な食事療法や服用中止での悪化あるいは投薬数量が増える傾向との成績を示された。 保険診療上の留意点については、審査員による多少の解釈の違いに触れた上で、指導管理料算定要件、薬剤や検査に対する適応病名、併用制限などの事項について細やかに解説された。

 今日、DPP4阻害薬をはじめとする経口血糖降下剤などを駆使することで、“良質な血糖コントロール”が得られるようになってきた。他方、糖尿病治療の根幹は、食事療法や生活習慣の管理に相違ないことから、専門医の助言を取り入れつつ、広く実地医家が主体となって糖尿病診療を担当する体制が必要であろう。本講演の狙いはこの点に帰結するのではないか。(山科・福光 眞二)

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