社保研レポート/在宅酸素療法とは
第627回(3/19)在宅酸素療法の実際について
講師:京都府立医科大学 呼吸器内科 准教授 岩崎吉伸 氏
在宅酸素療法は、主に呼吸不全に対して行う。呼吸不全とは、室内吸入時の動脈血酸素分圧60Torr以下となる状態で1カ月以上続くのを慢性呼吸不全という。
呼吸不全の定義は、動脈血酸素分圧60Torr以下であり、パルスオキシメーターで酸素飽和度90%に相当する。酸素投与法には、患者の一回換気量以下の酸素を供給する低流量システムと換気量以上の酸素を供給する高流量システム、高濃度酸素を投与するリザーバーシステムがある。
低流量システムには、?鼻カニューラ、?簡易酸素マスク、?オキシアーム、?経皮気管内カテーテルがある。高流量システムには、?ベンチュリーマスク、?ネブライザー付酸素吸入装置がある。リザーバーシステムには、リザーバー付酸素マスクがある。在宅酸素療法における酸素供給装置は、家では酸素濃縮器を、外出時は酸素ボンベを使用することが多い。1日中酸素を投与された患者の生存率は、そうでない患者の生存率より明らかに高い。
在宅酸素療法の効果は、生命予後の改善、運動耐容能の改善、QOLの改善、肺性心の予防と改善、入院回数期間の減少である。わが国では、1985年に在宅酸素療法の社会保険適用が開始され、94年肺高血圧症、04年チェーンストークス呼吸を伴う慢性心不全にも適用になった。
適用基準は、慢性呼吸不全例では、動脈血酸素分圧55Torr以下、及び、60Torr以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血症を来す者であり、肺高血圧症例では、平均肺動脈圧が20mmHgを超える者が対象となる。慢性心不全例では、NYHA?度以上で睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数が20以上を睡眠ポリグラフィーで確認された症例、チアノーゼ型先天性心疾患では、発作的に低酸素、または、無酸素状態になる症例である。
在宅酸素療法の条件として、禁煙が守れること、患者と家族の理解、QOLが保たれている、住宅環境整備などである。診療報酬は、住宅酸素療法指導管理料に酸素ボンベ加算などの材料加算ができる。
社会保障制度としては、身体障害者福祉法、介護保険、医療保険がある。在宅酸素療法患者の80%が、身体障害者手帳を持っている。動脈血酸素分圧が60Torr以上でも重度の息切れなどがある患者に在宅酸素療法を行っている施設が多くみられる。
(下西・井上 治)