社保研レポート/下部尿路症状と前立腺肥大症の診断と治療を解説  PDF

社保研レポート/下部尿路症状と前立腺肥大症の診断と治療を解説

第634回(5/15)「下部尿路症状に対する診断と治療、及び保険請求上の留意点」
講師:京都府国民健康保険診療報酬審査委員会委員 京都泌尿器科医会会長
飛田医院院長 飛田収一氏

 5月15日の社会保険研究会は、飛田収一先生による下部尿路症状に対する診断と治療がテーマで、前立腺肥大症と過活動膀胱が中心のお話でした。まず正常な排尿についての説明があり、成人の場合は、(1)1回の排尿量は200〜400ml、(2)1回あたりの排尿時間は20〜30秒、(3)1日の排尿量は1000〜1500ml、(4)1日の排尿回数は5〜7回、(5)排尿間隔は3〜5時間に1回であり、加えて残尿感や尿失禁や尿の漏れがない、腹圧をいれずに排尿できる、尿が途中で途切れたりなかなか終わらないことはないなどの状態も含まれるということが述べられました。次に下部尿路症状(LUTS)についてですが、これは(1)蓄尿症状、(2)排尿症状、(3)排尿後症状の三つに分類され、(1)には昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁などが、(2)には尿勢低下、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿などが、(3)には残尿感や排尿後尿滴下といった症状があります。

 いよいよ本題の一つ、前立腺肥大症について入ります。前立腺肥大症は高齢男性(50歳以上)に最も多くみられる排尿障害の原因となる良性疾患です。前立腺癌が前立腺の辺縁領域に発生するのに対して、前立腺肥大症は移行領域に好発します。また前立腺肥大症は、組織学的には細胞数の増加であり、肥大より増生が適切な表現とのことでした。症状ですが、尿道閉塞から直接的に生じた排尿困難と、尿道閉塞から二次的に生じた膀胱機能の変化に関連した刺激症状があります。排尿障害と蓄尿障害の合併は高く、93・9%というデータもあります。尿勢低下と夜間頻尿が2大症状で、加齢に伴い尿意切迫感と夜間頻尿が増加します。診断ですが、病歴、直腸診(理学的検査)、尿検査、血清クレアチニンの測定、PSA値の測定、超音波検査法による残尿測定や前立腺の大きさ、上部尿路の拡張の有無などが行われ、残尿測定は一番大事だと述べておられました。

 治療ですが、ハルナールが出現してから手術療法は減少傾向にあるとのことでした。ハルナールはα1ブロッカーですが、ほかにフリバス、ユリーフがあります。α1ブロッカー以外に抗アンドロゲン薬、植物エキス剤/アミノ酸配合剤を使用することもあります。ここで過活動膀胱について簡単に触れておきます。尿意切迫感があり、通常は頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うことがあれば伴わないこともある状態を過活動膀胱(OAB)と呼びます。治療は抗コリン剤ですが、口渇感などの副作用が少ない新薬、ベシケア、ウリトス、ステーブラ、デトルシトールが出現し、なかなか効果もあるようです。まだ講演を十分お伝えできていないのですが、紙面の都合上これで終わらせていただきます。(伏見・菱本 康之)

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