社保研レポート/プライマリケアに重要な頭痛診療の実際を詳説
第636回(9/4)「外来頭痛診療の実際」
講師:立岡神経内科院長 立岡良久氏
講演する立岡良久氏
耳鼻咽喉科クリニックを開業して8年。勤務医時代の外来診療で診ていた以上に、顔面の痛みや頭痛の患者のコンサルトが多い。主として急性副鼻腔炎を中心とした副鼻腔、上咽頭の病変の精査、治療を担ってきたが、筋緊張性頭痛や片頭痛と思われる患者さんも来院される。9月4日の社会保険研究会では、頭痛診療の第一人者の一人であられる立岡良久先生のお話を拝聴し、プライマリケアに重要な頭痛診療について学ばせていただいた。
先生は、まず第一に二次性頭痛を見逃さないこと、二次性頭痛の疾患によっては時として外科的治療が必要になるので、医療連携が重要であることを強調された。二次性頭痛には頭部外傷、頭頚部血管障害、非血管性頭蓋内疾患、感染症など危険な頭痛が多く、鑑別のポイントとして、突然今まで経験したことがない、いつもと様子が異なる、頻度と程度が増えていく、50歳以上に初発、神経脱落症状、精神症状、髄膜刺激症状を挙げられた。症例の具体的解説を、急性副鼻腔炎、くも膜下出血、外傷性脳内出血について述べられ、現病歴の丁寧な把握の重要性を認識させられた。
次に、片頭痛と緊張性頭痛、群発頭痛など一次性頭痛の診断基準と具体的症例を解説された。最も患者数が多いのは単純な片頭痛であり、症候・診断基準(光過敏、日常生活に支障をきたす、ズキンズキンと脈打つ痛み、体を動かすと痛みを増す、悪心・嘔吐、音や臭いに過敏など)も特徴的であること、トリプタン製剤の普及で治療も始めやすいので、積極的な頭痛診療への参加をすすめられた。
今回の講演で驚いたのは薬物乱用頭痛(MOH)の話である。NSAID、複合鎮痛薬、エルゴタミン、トリプタンの長期使用、しかも投与法や投与量が不適切であるがために生じる、いわば医原性疾患であることを述べられた。患者が持つ薬物乱用頭痛のスパイラル、カウンセリングと予防薬も用いた正しい頭痛治療の実際を専門家の立場から詳細に語られ、われわれ実地医家にとって正しい薬剤使用法を勉強し、患者さんと人間関係を構築して治療、フォローすることの重要性を考えさせられた。
さらに、月経関連片頭痛の話を詳説され、生理痛で片づけてはいけないとのことである。群発頭痛の具体例は印象深く、専門医の診療の実際、神経内科への紹介のタイミングを考えさせられた。
講演を通じて、安易に漫然と鎮痛剤で対応することは言語道断、背後に潜む頭痛発生への目を持つことの重要性を再認識させられた。(綴喜・村上 匡孝)