社会保障改革は喫緊の課題/11年度年次経済財政報告
内閣府は7月22日、2011年度の「年次経済財政報告(経済財政白書)」を発表した。「社会保障費の増加に見合う安定的な歳入項目がない」「高齢関係支出の効率化が必要」など、財政と社会保障の現状・課題を盛り込んでいる。政府のバランスシートも公表。09年度末の政府資産は約986兆円、負債総額は約1231兆円と債務超過の状態にあり、財政赤字削減による国債発行残高の抑制や、年金制度をはじめとする社会保障改革を「喫緊の課題」と位置付けた。
●「高齢者1人当たり支出の効率化努力を」
報告書は「大震災後の日本経済」「新たな『開国』とイノベーション」「人的資本とイノベーション」の3本柱で構成。財政と社会保障は、「大震災後の日本経済」の中に記載している。「社会保障支出が増加している国は複数あるが、同時に歳出規模も拡大しているのは日本だけ」で、社会保障支出の抑制と経済成長率の向上が極めて重要と指摘。高齢人口比率の上昇が続く中、特に高齢者1人当たりの支出を効率化する努力が求められると明記した。
消費税率引き上げを盛り込んだ「社会保障・税一体改革」の政府・与党案策定を受け、日本、ドイツ、英国における過去の税率引き上げ時の消費動向も分析した。日本とドイツでは、引き上げ前後の駆け込み需要と反動減が明確だが、英国では明確ではないと指摘したほか、「1989年の日本や98年のドイツのように、消費の基調が強い場合は、個人消費が増税により必ずしも停滞するわけではない」ともしており、税率引き上げ後の消費動向は、国や時期によってまちまちだと結論付けている。
●社会保障、雇用拡大に寄与も労働生産性低い
産業としての社会保障の成長促進効果にも言及した。日本の医療・福祉産業の経済成長率は、2000年代平均で年5%前後と高い数字を示しているが、労働生産性は同平均で1%に満たない上昇率で、産業平均を下回ると指摘。医療・福祉産業の高い成長率は、就業者の増加や就業時間の長さによるもので「社会保障産業は雇用拡大には寄与しているが、持続的な成長産業となるには生産性向上に取り組むことが重要」とまとめている。
関連産業では、医薬品産業の労働生産性が急速に伸びる一方、医療機器・精密光学機器の伸び率は全産業平均より低いと示した。医療機器などの生産性上昇率が高いドイツを、医療・福祉産業が持続的な経済成長をもたらす国の例として挙げている。(7/25MEDIFAXより)