社会保障基本法への挑戦は新段階に 首都圏で9・27シンポ開催へ
医療を含めた社会保障の全面改悪に対する対抗軸として「社会保障基本法」制定を求める運動を―と京都府保険医協会が提起し、5年が経過した。
協会はその後2年半にわたる研究会を経て、社会保障基本法案を作成、その成果として『社会保障でしあわせになるために』(かもがわ出版)を上梓(07年10月)。シンポジウム「やりなおせる国・日本をつくろう―社会保障基本法を手がかりに」(07年9月)の開催。関浩理事長はじめ、京都ゆかりの著名人によびかけ人を担っていただいての「『社会保障基本法』立法化を求める会」の立ち上げ、先日の「芸術と社会保障のつどい」(09年3月20日・実行委員会形式)開催と、着実に取り組みを進めてきた。
9・27シンポジウム第1回準備会議のもよう(東京)
9・27シンポ開催へ
昨今、構造改革の結果としての貧困と格差の拡大が国民の前に露わになる状況下、この国の未来をどのように展望するかは、いよいよ焦眉の課題になっている。更なる構造改革を許すのか、構造改革路線自体に正面から対峙し、憲法25条をもつ国にふさわしい「社会保障を中心とした国のあり方」を目指すのか。壮大な運動の軸を示すことができるかが鋭く問われている。
来る9月27日(日)、東京・新宿のあいおい損保会館において「貧困をなくし社会保障を守る『基本法』を考えるシンポジウム」の開催が決まった。
同シンポジウムは、左記の6氏が呼びかけ人。各氏とも、京都府保険医協会の呼びかけに応じて、立ち上がったもの
準備会議を開催
4月19日には、その第1回準備会議が開催された。
準備会議は、呼びかけ人のうち本田氏、竹下氏、後藤氏、渡辺氏、協会からは垣田副理事長、首都圏の関係団体からのオブザーバー参加を得て開催した。
冒頭、垣田副理事長が挨拶し、「社会保障基本法が今の時期、非常に大切になっている。医師団体である保険医協会がそこまでやらねばならないのか、という意見もある。しかし、ここまで医療が貶められている状況を見ると、これは社会のあり方、政治の問題である。これ以上はないという方々に、呼びかけ人になっていただいている。首都圏での取り組み、その成功を得たい」と力強く述べた。
呼びかけ人各氏からは、「医療崩壊の現場から現実を見ると、日本は根本的に国のあり方を見直さないといけないと感じた。真の民主主義社会のあり方として、国民が自分たちの生き方、税金の使い方を決められるようにならないといけない。そうでないと、医療の崩壊だけを止めるということはできないと確信に至った。今の日本の姿のまま、次の世代にバトンタッチするわけにはいかない」(本田氏)、「小泉構造改革の結果、大変な事態になっている。ただ、新自由主義を批判するだけでなく、対抗する構想を出していかねばならない。新自由主義に代わる制度を具体的に提起していかねばならない。その一つとして、社会保障基本法を提示し、対抗の構想を示していく。実際政治を変えていく力になれたらと思う」(渡辺氏)、「もともと、新しい福祉国家型の社会を対抗構想として打ち出さないといけないと、90年代の半ばから発言してきた。あちこちで、社会保障基本法の話をしていると、あまりに貧困の度合いが厳しいので、ストレートに受け止めてもらえる状況になっている」(後藤氏)、「弁護士として、生活保護・貧困問題とかかわってきた。生活保護裁判も含めた行政訴訟は、国民の側が勝てない状況がある。情報の多くを行政が握っていて、国民の側がそれを崩さないと勝てない。日弁連は障害者差別禁止法提案、労働者派遣法改正案提案、ついに2月には『貧困と人権に関する委員会』を立ち上げ、委員長の木村弁護士が『日本型福祉マスタープラン』の必要性を強調するに至っている」(竹下氏)との発言があった。
協会は、シンポジウムの成功に向け、広報活動をはじめとした準備を本格化させている。
貧困をなくし社会保障を守る「基本法」を考えるシンポジウム
日 時 9月27日(日)午後1時30分〜4時30分
場 所 あいおい損保会館(東京・新宿) 呼びかけ人 落合恵子氏(作家・クレヨンハウス主宰者) 本田 宏氏(済生会栗橋病院副院長、NPO法人医療制度研究会副理事長) 竹下義樹氏(弁護士・つくし法律事務所、全国生活保護裁判連絡会事務局長) 後藤道夫氏(都留文科大学教授) 湯浅 誠氏(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長) 渡辺 治氏(一橋大学教授)